奉仕の虜-1
「門村さん、この前の絢子のショーは好評だったよ、またM女を世話してくれんかね?」
「それは構いませんが……参ったな」
「どうして参るんだ?」
「絢子はとっておきでしたからね、自己破壊衝動って言うんですかね、死んでもいいって口走ってましたでしょう?」
「ああ、あのレベルはそうそう居ないじゃろうな」
「その通りで……」
「でもな、門村さん、里子なら大抵の女から被虐味を引き出すぞ」
「そうですか?……そういうことなら」
「いるのか?」
「メイドなんかどうです?」
「最近流行りじゃな、わしも行ってみたことがあるぞ」
「は? メイドカフェにですか?」
「ああ、わしほどの歳寄りは珍しいらしくて中々モテたぞ、色気と言う点じゃ物足りなかったが気分は良かったな、『萌え〜』とか言うのがどんなものかわかったよ」
「気がお若い……メイドがお気に入りならいいのが居ますよ」
「どんな娘だ?」
「これがびっくりでして、中央線の駅名にもなってる有名国立女子大の学生でしてね、真面目な娘なんですよ」
「そんな娘がメイド喫茶か……だが顔見知りとメイド喫茶で鉢合わせたりはしないのかね、あの駅と秋葉原は近いぞ」
「まあ、女子大ですからね、メイドカフェの客にはならんでしょう? それに逆変装とでも言うんですかね、普段はすっぴんで眼鏡、ひっつめ髪なんですが、眼鏡を外して綺麗に化粧して髪をセットするとぱっと目には解らなくなります、実際、私も店の外で待ち合わせた時すぐには気づかなかったくらいで……眼鏡のすっぴんもまたそれはそれで悪くないですが、眼鏡を外して化粧をすると見違えるように可愛くなりますよ」
「なるほどね、しかし、そんな真面目な娘がねぇ……」
「性格や学力と性癖は別でしてね……つまりは『奉仕』の虜なんですわ」
「ほう」
「メイドカフェじゃお触りもありませんがね、客が飲み物や食い物をこぼすこともあるでしょう?」
「ああ、別に珍しいことじゃないな」
「そんな時にですね、はいつくばって床を拭くんですわ、それ目当てで何度も通ってきちゃコーヒーをひっくり返す客も居る位で……」
「そいつはわしでもこぼしたくなるな」
「視線を感じると興奮しちまうんだそうで……そういう娘は貴重でしょう? メイドカフェじゃもったいないくらいなんですが、真面目な娘ですしね、超一流大学の学生だ、風俗店に勤める気はないそうなんですがね、ただ、メイドカフェじゃ自分でも満足できない……」
「本人はショーに出ることに同意するかね?」
「それは請合います、ただしムチでひっぱたくような責めは嫌なんだそうで」
「ふむ」
「たくさんの客の視線に晒されたり、フェラとかして廻るのは是非にもって具合なんです」
「それはそれで面白いショーになるな」
「あと、性体験が豊富と言うような娘じゃないんで……」
「廻しとかドリル責めとかはNGと言うわけだな?」
「その通りで……それで宜しければ」
「ああ、里子に相談してみよう」
翌日、出勤前の里子が事務所に立ち寄った。
「面白いじゃないですか、ハードなばかりが能じゃないですから」
「やってみるか?」
「ええ、是非……」
ドアがノックされ、若い女子事務員が部屋に入って来た。
「お茶をどうぞ……」
「おお、ご苦労様」
「ありがとう……」
会釈して立ち去る事務員を里子はじっと目で追っていた。
「どうかしたかね?」
「あの娘……」
「ん? 幸恵がなにか?」
「……いえ……いいんです、気のせいかも知れませんし……」
「気になるな、なんだね?」
「彼女、下着を着けてませんね」
「え? そうか?」
「ラインが出ないように工夫された下着もありますけど……多分彼女は……」
「ノーパンだというのかね?」
「ええ……」
「どうしてわかる?」
「立ち振る舞いです、悟られないように気を遣いますから動作が……昔の女性は着物の下が腰巻だったでしょう?」
「ああ、そうだな」
「自然にしとやかな立ち振る舞いになるんですよ……彼女はそれをミニスカートで」
「タイトだし、ミニと言っても中年でも着れる程度じゃがね……」
「女子高生みたいなミニじゃノーパンは出来ません、あの程度の短さがぎりぎりでしょう……」
「つまり、どういうことだね?」
「露出趣味……見られたい願望があるんじゃ……」
「……ふむ……少し気をつけて見てみようか……」
「あんまりジロジロと観察されませんように……でも『おや?』位の反応を見せると興奮するかも……」
「ああ、心しておこう……ところでメイドの方だが」
「私は日曜の夜ならいつでも……」
「では門村さんと決めて良いな?」
「ええ……楽しみですわ」