寝返り-1
ちづるはタクミに
しがみついたまま眠ってしまった。
ちづるが起きないように、
しばらくタクミは動かずにいた。
それから、
起こさないようにそっと
ちづるの腕を自分から離す。
タンスからバスタオルを出して
ちづるのお尻の下に敷く。
いつものように
パジャマを着せてあげていると
ちづるが寝ながらモソモソと
寝返りをうつ。
タクミの温もりを、探している
ような動きに見えた。
タクミは
自分の胸をちづるの顔の近くに
寄せて、片腕で抱くようにして
ちづるの背中をさする。
寝息が深くなるのを
見て、タクミは微笑んだ。
そのままリモコンを持ち
電気を消して、タクミも眠った。
翌朝。
先に、目を覚ましたのは
タクミだった。
今日は祝日で学校は休みだ。
ぼんやりと眠気眼で
目覚まし時計を見ると7:30だ。
ちづるの寝顔を見る。
ちづるは
自分の方を向き、
気持ち良さそうに眠っている。
「、 、 、、、。」
年の差なんて
たいした問題じゃないって
昔は 思ってたっけ、、 、。
主婦だろうが
学生だろうが
恋愛なんて
始まる時は始まるし
終わる時は
終わる
なのに、 、、
「 っ はーーー、、、」
ちづちゃんは吉川に
何を相談したんだろ
なんか やっぱ
頼られてないよな 俺、 、
「、、 はぁ。
、 、 、、なんで 俺
18 」
あーーーーー、、、
嫌だ
『なんで俺は 18才なんだ?』
とか?
そんなベタな恋愛ドラマみたいな事
言う日が 来るとは、、
「、、や。
まだ言ってないし。
ちょっと思っただけだしーー。
、、、。
年なんて、みんな平等に
くうっつーーのーーー、、、。」
タクミは、
そんな独り言をブツブツ言いながら
ちづるの頬を撫でる。
ちづるはぐっすり眠っている。
タクミはしばらくして
布団から出て、トイレに行った。
それから、キッチンへ向かった。
***
ちづるが目を覚ました。
時計を見ると8:00だ。
隣に、タクミがいない。
トイレかな?と思い、
暖かい布団の中で目を閉じて
耳をすませる。
しばらく
そのまま耳をすましていたが
足音がしない。
「、 、 、、。」
もう あっちの部屋かな
早起きだなぁ、、、
もう少し布団で
ぬくぬくとしていたかったが、
タクミの事が気になり布団から出た。
トイレに行ってから
洗濯機をまわし、リビングへ行くと
タクミはソファーに座っている。
コーヒーを飲みながら
テレビの、朝のニュースを観ている。
タクミが振り向いて言う。
「 おはよ。」
「 おはよう。早起きだね。」
「ちづちゃんこそ。
今日、仕事午後からでしょ?」
「うん。」
「もう少し、寝ててもいいのに。」
「んー、、なんか、起きちゃった。
自分で入れたの?」
「んっ?」
ちづるがテーブルのマグカップを
見ている。
「うん。 ぁ、飲む?」
「ぇ? ぁーーー、、、うん 」
ちづるが
コンロのやかんを見ると同時に
タクミが言う。
「 あ、俺 入れるよ。」
「 ぇ?」
タクミは
立ち上がり、キッチンへ来る。
ちづるはキョトンとして立ちすくみ
タクミを見ている。
タクミは気にせずコーヒーを入れる
準備をしながら言う。
「ちづちゃんは〜
微糖派〜〜 だよね?」
「、んっ? うん、、」
「俺やるから。
座っててよ。」
「 、 、、、 うん。」
それから2人は
コーヒーを飲みながら
ソファーに座り
のんびりとテレビを観ていた。
しばらくしてちづるは
部屋着のワンピースに着替えて
朝食を作り始める。
いつものように
「いただきます。」
と2人で言い、朝食をとる。
タクミが、
TSUTAYAでレンタルしていた
映画の話をしている。
あまり面白いものでは
なかったらしい。
ちづるはいつものように
話を聞く。
聞きながら
タクミが戻ってきてくれた事、
ここに今、一緒に居てくれる事を
改めて感謝したい気持ちになる。
ご飯を食べ終えて、
ちづるは空いた食器を片付ける。
流しにお皿を置いて
洗い物に取りかかろうと
部屋の隅のハンガーにかけてある
エプロンに手を伸ばそうとすると、
タクミが立ち上がりながら言う。
「今日 俺洗うよ。」
「 え?」
「ん? お皿。 俺が洗う。」
「えぇー? なんで? いいよー。」
「いーから。」
「、 、 、、。」
タクミは、腕をまくりながら
流し台の前に立ち、
洗い物に取りかかろうとする。
ちづるは呆然と、
タクミの斜め後ろ姿を見つめる。
タクミがスポンジに洗剤を
かけながら言う。
「あのねぇ、
俺だって洗い物ぐらい
出来るからね?」