寝返り-3
タクミの言う駅のファミマとは、
駅ビルのすぐ隣のコンビニだ。
タクミも、そのコンビニをよく使う。
この店は入店すると
最初に目につくのが本棚、
という造りになっている。
1週間ほど前タクミは
いつものようにそのコンビニを使った。
その日も、本棚が1番に
視界にはいる。
ちづるの持っていた雑誌が、
本棚の真ん中にあったのを
タクミは覚えていた。
普段はもちろん
1冊の雑誌を覚える事などないが、
この雑誌は違った。
表紙の文章を横目に
タクミは思う。
こんな雑誌を読む女は、
たぶん、彼氏もいない女だろう。
いたとしても、
彼氏の気持ちを察する事の
出来ない勘の悪い女だろう、と。
タクミはちづるをじっと見つめて思う。
「、 、 、、。」
う わーーーー
いたよ こんな近くに
勘の悪い人
、 、、嗚呼。
俺って やっぱり
「、、、可哀想。」
「 ぇっ? 何が? 私?」
「、、、。 うん。」
「なんで? 」
「こんな本、あてに、、
本気にする人なんているんだね。」
「 っ ぇーー?
結構面白いよ?
当たってる所あると思うし。」
「いーーお客さんですねーー。」
「、、、。
ちょっと馬鹿にしたでしょ?」
「 ぇ ?
凄いじゃーん。
よく分かったね〜〜」
「もーーー、、、」
ちづるは、
少しふてくされながら
雑誌をタクミから取り上げて
読み始めた。
それからお昼の時間になり、
軽めの昼食を食べる。
2時前になると
ちづるは仕事へ行く為に
着替えをして、身支度をする。
脱衣所で化粧を終える。
リビングのソファーで
スマホをいじっていた
タクミの元へ来て、声をかける。
「見て見て〜
このニット、知可子にもらったの。
かわいいでしょ?」
ちづるは、
タクミに自分の着ているニットを
みてほしくてそう言った。
タクミが顔をあげて、
自分の隣に座ったちづるを見る。
ジーパンの上に着ている
新しい真っ白のニット。
V字形の首元。
袖口の部分に独特な
ピンクの刺繍がしてあり
確かにかわいい、とタクミは思う。
かわいいと思うと同時に
何かひっかかりタクミは黙った。