夜道-3
タクミは、
自転車から降りて歩き出す。
ちづるはタクミの隣を歩く。
タクミは黙ったままだ。
しかし明らかに怒っている事が
空気で分かる。
しばらく、重い空気の中
黙々と歩いた。
ちづるが言う。
「 ぁの、 、、
ごめんね。」
「何が?」
「送って、、もらっちゃって。」
「、 、 、、、。」
「吉川さんが夜道、
危ないからって、、。
断ったんだけど、
自分も酔い醒ましに
散歩したいからって
吉川さん 」
「、、だから ?」
「 え?」
「私は悪くないです。
みたいな? 」
「 っ、 、、、」
「、 、、、、。」
「 、、、。
言い訳みたいに
聞こえるかもしれないけど 」
「、 、、 っ 」
本当に なにも
分かってないのかよ
自分の事
「家まで送ってもらうつもりは
なかったの。 っ それに、」
「どうかなぁ?
俺よりアイツに
送ってもらいたかったから
俺からの迎え断ったんじゃないの?」
「っ!? 違うよ!
私は1人で帰るつもりで、 っ 」
「なんかさー。
そういうのさぁ、卑怯じゃない?」
「 ぇ? 」
「全部、、。私は決めてません。
みたいな?
それしかないの ? 」
「、 、 、、。」
「どうせ、それしかないんでしょ?
それならもう、聞きたくない。 」
駄目だ
なんで こんな事
〜っ、
「ちづちゃんは、どうせ、、。
俺にバレなかったら
アイツに送ってもらった事、
言わなかったと思う。 」
「 ぇ? 」
「自分に都合の悪い事は
言わないもんね? 俺に」
「ちょっと、、 待って?
なんの事? 」
「 いつも、そうじゃん。」
健と会話した事も
旦那に会った事も
「 いつも?
私、 タクミ君には
ちゃんと っ 」
「ちづちゃんは、、
自覚ないかもしれないけど。」
「 〜っ、 ? 」
2人はいつの間にか
駐輪場に着いていた。
屋根のついている駐輪場の、
頼りない外灯の光の下で
タクミはちづるを見ずに
自転車を乱暴にガシャン!と
とめてこう言った。
「馬鹿にしてんだよ。
俺の事。」
「 っ!? 、 、、 」
「、 、 、、、。」
2人は沈黙する。
タクミはちづるを見た。
ちづるは
タクミの目を真っ直ぐに見る。
辛そうな顔をして震える声で言う。
「、 、〜っ、してないよ。」
「、 、、、。 」
「 なんで、〜っ
そんな事、言うの ?」
ちづるの震える声は
涙声になっていた。
タクミは
ちづるに背を向けて
外階段に向かって歩こうとする。
「 タクミく」
「俺、、。
しばらく 会いたくない。」
「 ! 〜っ、 、、、」
「、 、 、、っ 」
タクミは、
ちづるが自分の事を
引き止める事を強く望んだ。
泣いて、叫んで
そんなの嫌だ、と言ってほしかった。
しかしちづるは
静かに言う。
「 、、分かった 。」
「 ! 、、 〜っ 」
タクミは
階段を上がり
自分の家に戻った。
ちづるは
しばらくその場に立ちすくんでいた。
その後静かに歩き出して
階段を上がり家に帰った。