鉄製ブラジャー-1
館内ツアーはようやく、秘宝館らしい、いやらしい形の器具の説明に移ろうとしていた。
しかし、ここは観客実現型の秘宝館……、先ほどの簡単な言葉のやり取りだけではもちろんなく、これから観客たちは自分たちの身体で、この秘宝館を体験することになるのだ。
「さあ、この展示物をご覧なさい。これは女性の乳房を大きく発達させるための器具で、某国では特許も取得したと言われる代物よ。実はこれ、物凄く気持ちいいの。幸江さんっ、ちょっとここにいらして」
「えっ?」
驚いて身動きしない幸江の肩を抱くように、ヴァギ奈が幸江をその器具の前まで進ませる。
「坊やもおいで、名前は?」
「えっ、あの、マサカズです」
「そう、マサカズ、いい名前ね。この器具を持ち上げて幸江さんの頭の上から被せて頂ける?」
「あっ、は、はい……」
幸江は、文華のほうを見て、「えっ? なに?」といった表情をしているが、文華はそれを楽しそうに見ている。
「幸江さん、ジャケットは危ないから脱ぎましょうか」
ヴァギ奈がそう言い、事務的な流れで幸江はジャケットを脱ぎ、薄いピンクのシャツ姿になった。
シャツの下に黒っぽいキャミソールが透けていて、それほど大きくない胸の膨らみが見てとれる。
「本当はブラジャー脱いだ方が効果あるのよねぇ」
ホースが絡まないようにマサカズをサポートしながら、ヴァギ奈はそう言うと、
「幸江さんは何カップなの?」
と問う。
「えっ、Cカップです……」
少し戸惑いながらも、幸江は正直に答える。
「そう? もう少し大きく見えるけど、まあ、これでEにしてあげるわね」
「えっ?」
幸江は不安そうな顔になる。
それの表情を見て、
「あら、大丈夫よ、痛くはないから。少し、くすぐったいかしらね」
大きな鉄枠で出来たブラジャーのような骨組みに、乳房を覆うように透明な半球体のカプセルが装着されており、そこからホースが二本伸びているその器具を、マサカズは幸江に被せた。
「では、マサカズ、その透明なカバーを幸江さんの胸にセットしてあげてね。ちょうど乳房の真ん中にカバーの真ん中を合わせてちょうだい」
「は、はい……」
「幸江さん、こちら座ろうか、疲れるでしょう……」
「あっ、は、はい」
館内ツアーの開始からわずかに5分程度で、誰もヴァギ奈の指示に逆らえない雰囲気が出来上がっていた。
威圧的でありながら、配慮を欠かさない、そんなアメとムチでツアーを仕切り始めた。