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思い出の君、今いずこ
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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思い出の君、今いずこ-3

「約束、してくれるかな? 雅樹」
 親指でそっと涙を拭うと、美由は笑顔を作ってまた語りかける。
「十年後に、この八月に、また会おうって。そしたらその時は、わたしも雅樹ももっと大きく
なっていて、自分達の意志でずっと一緒にいられるはずだから」
 時間にすれば、ほんの数秒。
 いっぺんに大人びた美由の顔に目と心を奪われながら、雅樹は何度も頷いた。
「分かった……分かったよ、美由。約束する。十年、待ってる。絶対、忘れない」
「うん。ありがとう、雅樹。約束だよ」
 美由はにっこり微笑むと、雅樹にそっと顔を寄せる。
「え?」
 何とも言えない甘く柔らかな感触が、雅樹の頬に残った。
「じゃあね。わたし、もう行かなきゃ」
 精一杯の笑顔で手を振り、去っていく美由。
「……」
 逆光に向かって駆けていくその背中を、雅樹は頬に手を当てながら、ただ呆然と見送るしか
なかった。

(ま、まさか……)
 こんなことが、本当にあるのだろうか。
 数合わせ程度の軽い気持ちで参加したのに、とてつもない、奇跡のような巡り合わせを体験
してしまった。
「……」
 雅樹が眼前に座る女の子を、改めてまじまじと見つめる。
 艶のある長い黒髪は昔のままだが、前髪が眉の上で切り揃えられ、いわゆる「ぱっつん」に
なっているのが特徴的だ。やや丸めの顔にくりっと大きな両瞳が、愛らしい小動物の佇まいを
連想させる。小さめの鼻と潤んだ唇もバランスよく配置されており、外見的にはかなり可愛い
部類と言って差し支えないだろう。ゴスロリ風の衣服に包まれた身体は細め。すらりと伸びた
足に、ピンクと白のストライブがあしらわれたニーハイがよく似合っている。
(もしかしたら……)
 美由も、あの約束を覚えているかもしれない。
 雅樹はふと、そう思った。
 全くの偶然ではあったが、今年はちょうど十年目。そして約束の、八月。
「ん? どしたの雅樹? ぼーっとして」
「あ、ああ。ちょっとな。昔のことを思い出して。別れ際にした、約束とか……」
 心臓が破裂しそうなほどの緊張感を必死に隠し、雅樹がさりげなく話題を振った。


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