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思い出の君、今いずこ
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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思い出の君、今いずこ-2

 それでも、一応は部会を通して決まったことを断るわけにもいかず、雅樹は照りつける夏の
陽射しを全身に浴びながら、待ち合わせ場所へと足を運んだ。
「あ、部長。どーも」
「お、藤坂も来たか。よし、これで全員だな。向こうは少し遅れるそうだから先に店に入って
待つことにしよう」
 会場は、本業は居酒屋だが昼は定食屋もやってますといった感じの、小さな店。
「やあ、どうも。遅れまして」
 小上がりに入ってしばらく待つうちに、F大映像研究会の面々がぞろぞろと姿を見せた。
「あれ……もしかして、雅樹?」
 五人の真ん中に座った雅樹に、正面から声がかかる。
「み、美由?」
 目の前で驚きの表情を浮かべていたのは、匂坂美由(さぎさかみゆ)だった。
 小三の春に転校してきて、夏休みの終わりまでをともに過ごした。クラスで席が隣になり、
家も近かったため、毎日のように一緒に遊んだ女の子だ。
「うわー、ほんとに雅樹だ。あっはは、すごーい。久しぶりだねー」
「あ、ああ……」
 ぱっちりした瞳をきらきらと輝かせる美由に対して、雅樹は呆然としたままなかなか事態を
飲み込めない。
(……あ)
 録画映像を巻き戻すように記憶が遡り、あの日の思い出が一気に頭の中を駆け巡った。

 十年前の、八月。
 夏の夕陽に包まれた、秘密基地。
 学校近くの裏山にある、洞窟とも言えないくらいのささやかなくぼみが、いつも二人だけの
遊び場だった。
「引っ越すの」
 壁面に背をもたらせ、遠くを見つめながら美由は言った。
「な、何で?」
「お父さんの仕事の都合。いつものことだけど、今度は少し早くて……」
 並び立つ雅樹の問いにも淡々と、目を合わすことなく答える。
「そ、そんな……」
「だから、今日でお別れ」
 言葉を失う雅樹にそう言ったところで、美由の目から、すーっと一筋の涙がこぼれた。


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