『秘館物語』-23
「は、あぁ……んぅ、あっ、くっ、ひ、ひぅっ!」
半信半疑であるが故に、腰使いも何処か遠慮がちになっていた浩志ではあったが、碧のかわいらしい唇から零れる吐息の色合いが、甘いものでいっぱいになっているのを感じ取った時、浩志はその遠慮を捨てた。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ!
「ひ、ひあぁああぁっ!」
深い部分を、三度突いた。瞬間、碧の肩が大きく震え、頤が反った。
(間違いない、な)
碧は明らかに、快楽の中にある。それならと浩志は、押し留めていた欲望をぶつけるように碧の中を激しく前後して、粘膜の感触を愉しむことにした。
「くっ、うっ、あ、ああっ、あうぅぅ!!」
ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ……
「はぁ……へ、変です……わ、私、へ、変なの!」
碧は、体のいたるところに愛撫を受けていた時とは違い、中から擦りたてられるこれまで感じたことのない感触に我を忘れている。初めてのときは、体が裂かれるような痛みを感じるばかりだと雑誌には載っていたがそんなことはなく、浩志の固いものが粘膜いっぱいを押し広げ、それが前後するたびに腰周りに甘い電流が走って、碧はそれに夢中にさせられていた。
(わ、私……感じてる……)
確かに痛みはあったが、すぐにそれは快楽の中に埋没し、霞んでしまい、今の碧には欠片ほどしか残っていない。
(初めてなのに、私―――)
まるで感じることが罪悪のように思えてきた。
「あッ、ダ、ダメッ、あっ、あっ、あっ」
しかし、内側から吹き上がってくるような愉悦を拒むことなど出来ない。かすかな逡巡は綺麗に溶けてなくなってしまい、碧はその愉悦に意識を浚われた。
「碧……いい、感じだ……」
浩志もまた、思いがけないほど碧の中を堪能できている現状に満足している。中のうねり具合は、とても初めての性交であるとは思えないほど浩志を隅々まで慰撫してくるのだ。
「すごいよ、碧……中で、絡んで……」
玉虫色のように、腰を前後するたびに収縮の具合を変える碧の胎内(なか)。
「す、好きなの! 好きだから……!!」
快楽ばかりが飛び出していた唇が紡いだ、熱い想い。それに応えるようにして浩志は、更に激しく腰を突き上げた。
「ああぁああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
嬌声が、部屋を響かせる。
「碧、俺も……君が、好きだ……だから……」
「あ、あはくっ、うっ、んっ、んんんんっ!!」
「が、我慢できないんだ! 碧、碧ッ!!」
グチュッ、グチュグチュグチュグチュグチュ!!!
「ヒィッ! ひあぁあぁぁぁぁぁ!!」
溢れる欲望を苛烈に叩きつけてきた浩志。挿入の前の優しさが嘘のようなあらぶりだ。碧はその荒々しさに、浩志の中で燻っているカオスの片鱗を見た気がした。
「あっ、す、素敵です! ひ、浩志、さん!!」
だが、不快なものは何もない。あらぶるままに犯されていても、その灼熱の中で身を焦がされていることに、むしろ碧はたまらない快楽と幸福を感じた。
「浩志さんッ……好き、ですッ! 浩志、さぁン!」
浩志の激情を受け止める器を、碧は持っているということだ。
「!!」
不意に、碧の胎内で何かが弾けた。それは光の渦を碧の脳内に巻き起こし、次いで奇妙な浮遊感が生まれてくる。
「あ、わ、私――――」
イク……かつて味わった感触にそれは似ている。
「へ、変になるッ! な、何かが来てるのッ!」
込み上げてくる得体の知れないもの。だが、それに抗う術も泣く碧は…。
「あ、あっ、ああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
体を激しく震わせ、硬直させた。
「く、し、締まって……うっ!」
もちろんその硬直は、ダイレクトに浩志を刺激してくる。胎内の熱気によって愛撫されていた巨砲は既に爆裂を間近に控えていたから、それが粘膜の更なる収縮を受けた瞬間、浩志は己の限界を悟った。
「!」
ずる、と碧の中から全てを抜き取ると、反りあがった先端に集中していたものがその刺激を最後にして噴出した。
びゅるッ、びゅるッ! びるびるびるびるびる!!
「く、くっ……」
白濁した液体が、腹部に真っ直ぐ走る碧の傷跡に降りかかっていく。まるでそれを覆い隠すように、更に浩志の先端から吹き零れる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
先に果てを越えていた碧は、傷跡に振り撒かれた浩志の精子の熱さを感じながら、不意に降りてきた闇の中へと意識を持っていかれた。