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欠ける月々
【悲恋 恋愛小説】

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欠ける月々〜さよならの日々〜-1

たつさんと蛍を見に行ってから数日後…

私はまだその余韻から冷めないでいた。

一語一句思い出せる。貴方の顔がいつでも思い出せる。

また行こうでと言った、その唇さえも。

綺麗な顔がくしゃっとなる、その瞬間でさえも。

私はいつでも思い出せる。悲しいくらい思い出せる。

和樹の顔と同じくらい、鮮明に、色鮮やかに覚えてる。

私の体は、5月29日のあの日に戻る…



そして、思い出に帰ろうとした瞬間。



♪めちゃくっちゃー好きやっちゅぅねーんー♪

携帯が鳴り出した。

私の気持ちとは、あまりにも不釣合いな、ポップな恋の歌だった。



誰じゃろ。和樹は仕事中だしな。

気持ちのどこかで、たつさんからのメールだったらいいのにと思ってしまったが、そんな気持ちをすぐに打ち消した。ばかばかしい。あの人はメールするような人じゃないし。

携帯をパカッと、あけると、いつものように後輩からのメールだった。

浜口勇太。以前、私のことを好きだと言ってきた後輩。今では彼女もいるし、もうそんなことは遠い昔の話だ。

後輩の中ではダントツで仲良いだろう。今ではお互いの相談をするような仲だ。



なんだ、勇太か。

ほっとしたような、悲しいような、もやもやした気持ちになった。



「悠さん、前にたつさんに『気になる人がいる』って言ったじゃないですか?あれに関してたつさん面白いこと言ってましたよ(笑)」

たつさん…その単語だけで心臓をわしづかみにされたんじゃないかってぐらい、ドキドキがすごかった。陳腐な言葉だけれど、心臓が壊れるんじゃないかってくらいに。

「え?なんて?」

壊れそうな心臓で、壊れそうな指で、そんな文章を打つ。もう頭が沸騰しそうだ。

心臓がぎゅぅって締め付けられて、またパッと解放されて、ぶわっと血がたぎっていた。

何を思ったのだろう、たつさんは、あの一言に何を思ったのだろう…

なかなか返事が来ない。まだ?1分が異常に長く感じた。


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