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「曽根はもう少し積極的にならないと、一生カノジョなんてできねえぞ」と、前田にはしょっちゅう言われている。
大学だって、女の子なんてほとんどいない工学部だし、見た目も中身も完全なる草食系。
しかも女の子に対する免疫なんてまるで無いから、女の子と話すだけで変な汗が出てきたり、挙動不審になる始末。
そんな俺を心配して、前田はしょっちゅう一緒にナンパしようと誘ってくるけど、女に免疫のないヤラハタの俺にナンパなんてハードル高過ぎだっつーの。
そりゃ、女の子と付き合うことに憧れたり、前田の入れ食い話を羨ましく思うこともある。
特に前田のナンパ話を聞いていると、脳内麻薬みたいに頭がボーッとしてきて、自分の生き方が間違っている気にさせられてくる。
この世はやったもん勝ち。真面目に生きちゃバカを見る。と。
そんなことを考えながら、
「俺って頭が固すぎんのかなぁ」
駅の方に向かって歩いていると、
「あの、すみません」
と、若い女の声が俺の背後から聞こえてきた。
振り返れば、少し顔を赤らめながら立っている、俺と同年代くらいの女の子。
茶髪のセミロングのゆるふわパーマ。袖がヒラヒラした白い半袖カットソー。フワフワ柔らかそうな素材のピンクの花柄ミニスカート。極めつけは、カラコンによる黒目が大きな瞳。
いわゆる量産型女子ってヤツだ。
「はい……?」
その見た目も並みの没個性の女の子は、モジモジしながら細くもなく太くもない、これまた平均的な太ももを擦り合わせて黙っている。
何の用だろうかと、とりあえず落し物の可能性を考えた俺は、デニムの後ろポケットに手を入れる。
うん、スマホはある。
ショルダーバッグの中をチラリと見ても、財布もちゃんとある。
じゃあ、この娘は一体何の用だろうか。
首を傾げながら彼女の反応を窺っていると、その娘は一瞬だけ目をギュッとキツく瞑ってから、
「あの……すいません。もしよかったら、これからあたしとお茶をしてくれませんか!?」
と、意を決したように叫ぶのだった。