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2-1







これは夢か。何度も自分にそう問いかけては自分の太ももをつねるけど。


その度に元来の痩せ型のせいで太ももの肉をうまく掴めない、ダサい俺。


「緊張……されてるんですか?」


テーブル越しの彼女は、少し首を傾げながらこちらを見た。


さっき前田とダベっていた店と同じで、しかも同じテーブル席。ただ、相手が女の子に変わっただけで、どうして俺はこうも不甲斐なくなってしまうのだろう。


ナンパは嫌だと常日頃から持論を曲げなかった俺だったが、突如として女の子に「お茶していただけませんか!?」と逆ナンをされた時、曲がるはずのなかった持論が小枝のようにたやすくポキリと折れてしまうなんて。


女が男に声を掛けるなんて、美人局とか、援助交際とか、罰ゲームとか、総じて胡散臭いものばかりだってわかっているのに。


いつもの俺なら、絶対これは罠だって信じないはずなのに。


それがなぜ、こうしてこの逆ナン女と呑気に茶をしているのか、というとだ。


正直に言おう。


女の子に声を掛けられて超嬉しかっただけなんス。


もちろん、先述のハニートラップの可能性も考えた。


だけど、美人局や援助交際ならまず俺は見た目も貧乏くさい学生だから、こんな俺を罠に嵌めても向こうにはなんのメリットもないと思う。


だって、服はファストファッションのものばかりだし、腕時計はホームセンターで売ってる3000円くらいの安物だし。


そして俺が肩から掛けていた黒いショルダーバッグだって、高校の時から愛用しているくたびれたものだし。


こんな俺を罠に掛けたって時間の無駄そのものなのだ。


じゃあ、罰ゲームだろうか。


実は、逆ナンされた時に真っ先に浮かんだのはこの可能性。


俺らくらいの年代なら、よく飲み会なんかでエグい罰ゲームをやらかす奴らが多いことも知っている。


例えば、○○に告白、とかそういう感じのヤツ。


だから、お茶の誘いを受けたときは、どこかでこの娘の友達がニヤニヤしながら見てるんじゃないかと、キョロキョロ辺りを探った程だ。


だけど、その俺の疑念も、次の彼女の行動で一気に払拭されることとなった。


あの時、自分のトートバッグから財布を取り出した彼女は、


「あの、あたし怪しいものではないので!!」


と、財布を開いて学生証を見せた。


そしてその時、俺は確信を持ったのだ。


間違いない、これは純粋なる逆ナンなんだ、と。




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