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尚代
【SM 官能小説】

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契り-7

「あっ……あっ……ああっ……」
 いつの間にか男の腰に脚が巻き付いて来た。
 同時に尚代の身体が少しずつ、ベッドの枕元のボードの方にずれていった。
(気のせいかな。……なんだか締め付けが薄れている。……声が出ているがあまりにも規則的すぎる)
 男は不気味さを感じた。尚代が心の奥から発する声では無いような気がした。
(何か、変だ。……気のせいか……それとも俺が二回目だからか)
 不安が頭をよぎったが、男は亀頭に受ける一定の刺激から逃れられなかった。尚代は喘ぎながら顔を左右に振っている。
(やっぱり気のせいか……やっぱりこの女は感じている……ああ、俺ももう逝きそうだ)
 男の玉袋が再びせりあがっている。最大の快感を得るために懸命に尿道の根元を引き締めるが、間に合わなかった。
「くっ、出そうだ……」
 思わず漏らした声を待っていたかのように、男の腰に絡めた尚代の脚がギュギュッと強く締め付けてきた。ググッとお互いが密着した。
 男の動きが止まった。二度目の射精が始まった。
 男の顔がだらしなく歪んで、間の抜けた顔になっている。精液が尿道を熱く通過する快感にドップリ浸っていた。
 まさにこの瞬間だった。
 尚代は身体をよじって、ベッドの枕元のボードに不自由な両手を伸ばし、金属製の犬の置物を指先に取り、思い切り男の額めがけて、たたきつけた。
 置物が、射精真っ最中の男の額の真ん中にあたった。
「うわっ」
 男がひるんだ隙に、尚代は両脚を弛め、男から離れた。最後までしつこく体内の残っていた屹立がようやく肉壺から抜け出た。屹立は力無く、全体が白い泡に包まれて、既にだらしなく垂れ始めていた。
 男はベッドの上で顔を押さえて藻掻いていた。射精の余韻も手伝ってすぐには動けなかった。
 尚代は力を振り絞って立ち上がり、もたつきながらも、階下へ走り抜け、玄関へ降りた。
 逃げなくては、という一心だった。
「まてぇ」
 後ろから男がフラフラと走り降りてくるのがわかった。
「ああっ……こないでぇ……」
 尚代は裸だったが、玄関のドアを開けようとあせっていた。
「こんな時に、二重ロックなんて……」
 ラッピングされていて両手が上手く動かない。滑る指先で鍵を回して開けた。
「開いた!……あれっ?」
 ドアを開けようと、押したが、ドアが途中で止まって開かない。ドアチェーンがかかっていた。
 あわててチェーンを外そうとしているところに男が追いついた。
 ハアハアと息を吐きながら、男は身体をドアに凭れて、半開きにして押しつけた。チェーンが伸びて外すことができなくなった。
「だれかっ……だれかっ……ううううっ……」
 外に向かって叫びかけた尚代の口を男の右手が覆った。外はもうすっかり夜が明けて朝日が差していた。セミが鳴き始めて、今日も暑い日が始まっていた。だが、だれも外を通る人影が見当たらなかった。
「残念だったな」
 ホッと安心する男を見つめる尚代のどんよりとした絶望的な瞳が印象的だった。
(見かけと違って、意外と気が強い、油断できない女だ。……かわいい顔して……だが、いたぶりがいがありそうだ)

<尚代 第一話 終了>


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