第四章 漂着した恋人-11
「た、食べたいっ。食べたいですっ! チ、チンカス、た、食べさせてっ……ああっ、オチンポ、オチンポ……。……! っふぉっ! ふぐっ……、おごっ!」
叫んでいる途中で唇に押し当てられ、顎を緩めると巨大な亀頭はいっぱいにまで口を開かなければ含むことができなかった。舌でツルツルとした表面を摩り、小さな孔を擽る。しかしその舐め方では味も臭いも足らなくて、一旦口から唾液の糸を繋いで吐き出すと、味覚と嗅覚を頼りに肉幹から傘、首周りにペロペロと舌を這わせた。
「汐里……オシッコしろ」
暗闇の中で命令が聞こえてくる。
(……?)
土橋の異臭に脳が痺れて、言われていることがすぐに理解できなかった。
「聞こえないのか? オシッコしろ、おしゃぶりしたまま」
「え、だって……んんっ、ベ、ベッド……。ふ、服……」
そうは言うものの、汐里は昨日から排尿を控えていた。
会社でペットボトルに排尿した時から、性楽が極まる度に排泄の欲求が抑えられなくなっていた。人前――土橋が見ている前での排泄は、行為自体に性感を感じるようになっていた。だから日常から、いつなんどき土橋に要求されても対応できるよう、尿意を覚えても、極力レストルームへ向かわなかった。
「そのままやったら、きっと気持ちいい。そう思わないか?」
土橋が唆かすと、膀胱が熱く痺れてくる。「ベッドは気にするな。実は汐里、ベッドにマーキングしたい、って思ってるんじゃないか? くく……」
陵辱の場たるベッド。縄張りの証たる尿水を撒けば占領できる……
図星だ。さすがは愛しい主だ。
汐里は恥垢の最も溜まったポイントに奮いつき、音を立てて粘体を吸い取りつつ、もう躊躇するべき何物もなく尿道を緩めていった。
「で、出ふっ! 出ひゃふっ……!」
Tバックの前後に生温かい感触が広がったあと、左右から尿水が溢れて流れていった。ストッキングの内ももの肌身をヒリついても、排泄口を締めることはない。
「うあっ、イフッ、イッひゃうっ! スゴひっ……!」
そのまま汐里は絶頂した。
「相変わらずまっきっきのオシッコだなぁ、汐里」
「ん……、んあぁ……やあっ、恥ずかしいよぅ」
絶頂による高潮の中、とっさに手で膝の間に触れたシーツは温かくグッショリとしていた。特有の臭気も立ち昇ってきて、ショックではない、何物か分からない感慨が脳を痺れさせて、いよいよ上躯を支えていられずに真下へ突っ伏した。だがヒップだけは高々と掲げたまま、時折ビクッと慄かせている。
(わ、わたし……、に、人間じゃない……)
常人ならば口にしない物を食べ、服を着たまま寝床に排尿した。
しかも四つん這い。もはや自分は、淫辱を貪る獣だ。
「……汐里、オマンコに挿れて欲しいか?」
土橋の声が聞こえてくる。
「ん……」
起きることができずシーツに頬を付けたまま、コクリと頷いた。「……欲しいです。オマンコしたいです……」
すぐにそんな態度では土橋は許してくれないと思ったから、辛うじて言葉を続けた。
アイマスクの向こう、前にいた土橋が膝立ちで背後へと回っていく気配がする。
「汐里、自分で丸出しにしろ」
真後ろから命じられると、またヒップが揺れて蜜と残尿が下着を汚した。
汐里は額をシーツにつけて体を支えると、両手でタイトスカートの裾を握り、背を丸めてヒップの上まで捲り上げた。背を弓反りにし、ベージュのパンストに包まれた濃紫のTバックを背後の土橋に捧げる。
「あーあー、きったないなぁ」
「……ご、ごめんなさい……」
謝るとまた蜜と尿が漏れた。土橋が脚の付け根あたりのパンストを握ってくる。
(ああっ、早くっ……)
パンティストッキング。こんな物を獣が履いているはずはないのだから。
左右に切り裂かれた瞬間、汐里は歓喜の悲鳴を上げていた。
もう我慢できない――Tバッグも人間しか履かない物だと思った汐里は、気力を振り絞って肘を伸ばし、左手で上体を支えると、右手を背後に回してヒップの狭間の細いクロッチを掴み、伸びきっても構わない力で思い切り引っ張った。
「い、挿れてっ……、オ、オチンポっ。はやくっ……!」
剥き出しにした秘門を土橋に差し向けて懇願した。
待望の亀頭が秘割に押し当てられた。一刻も早く押し入って欲しい。なのにクチュッ、クチュッと音を立てて擦り付けてきた。
「いやあっ、は、はやく挿れて! もうっ……」
焦れて叫ぶ汐里へ、
「何回イキたい?」
不意に土橋が問うてきた。
「……え?」
回数制限なんか要らない。土橋が出したいだけ腰を振って、中をホジくり回してくれていい。
そうやって、狂って、本当の獣になってみせる――
「じゃ、とりあえず三回イクかぁ?」
「あ……、は、はいっ」
とりあえず、と言ったということは、その続きもある。汐里は甘ったれた声で暗闇の向こうへ言うと、
「イッたらちゃんと言うんだぞ。大きな声で。わかったか?」