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なりすました姦辱
【ファンタジー 官能小説】

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第三章 制裁されたハーフモデル-2

 画面から床へ目線を向けて、香りの元である人物の足元を確認すると、モスグリーンのペディキュアが見えた。派手なミュールを履いている。目線を上げていくと小麦色のスラリとした脚がずっと続いていた。土橋より少し背が高いくらいだろうが、踵の高い靴を履いているせいで、太ももの張ったショートパンツの腰は、自分よりもずっと高い位置にあった。細いといっても痛々しい痩せぎすな印象はない。脚は筋肉を帯びているが、若さで張った肌とその長さで、ゴツゴツせずに滑らかな曲線で美しく引き締まっている。
 更に目線を上げていくと目が荒くシースルーになったニットボレロや襟元の開いたシャツからも瑞々しい小麦肌を覗かせていた。胸元まで真っ直ぐ垂らした髪は、金髪に見えるほど明るく染められているが、痛んでいるというよりもむしろ艶がある印象だ。派手なヘアスタイルは、太めの眉に代表されるはっきりとして整った顔立ちによく似合っている。
 外人? ……いやハーフだろう。「派手さ」を「若さ」を触媒として「キレイ」に昇華させたような、見目の良い女だった。普段街を歩いている時に見かければ、目が惹かれたに違いないし、肌を露出したスタイルに感謝し、お言葉に甘えて鑑賞してしまっただろう。
 だが今の保彦は好スタイルを間近に見ても、淫情を感じなかった。
(モロ軽薄そうなギャル女だな……)
 同じ香りでも清楚な愛梨とは全くタイプが違う。愛梨は外面を華やがせて男を惹かせる、そんな安い女ではない。
 目線をスマホに戻した。しかし鼻先に漂ってくる香りに更に記憶を呼び覚まされて、
「やすくん……大好き。……大好き」
 真下から首に手を回し、保彦の律動を受け入れていた愛梨の表情が如実に思い出された。涙目には痛みによるものだけではない、嬉し涙も含まれている。
 猛烈に愛梨に会いたくなった。
 ジーンズの中で亀頭が持ち上がってくる。
 やめろ、オッサン。
 純情で回顧しているのだ。淫りがわしさによるものではないのに、抱かれている愛梨の像に股間を反応させる土橋が憎かった。保彦がどれだけの精神力で諌めようとしても、逃れられないフレグランスが後押しをしてきて、ジーンズの硬い布地に負けずに完全に先端が上を向いた。瞼を強く閉じても、蠢いて先端から邪淫の雫をトクトクと漏らして下着を汚していっているのがわかる。
 静かな闘争をしているうち、電車は上野に到着しようとしていた。ここで銀座線に乗り換える。
 助かった……。
 ドアの方を向くと、あの女も降りるようで、こちらに背を向けていた。改めて後ろ姿を確認すると、小さめのヒップがキュッと引き締まって長い脚がスラリと伸びている。素晴らしいスタイルだ。
 この勃起に愛梨を汚されるくらいなら、淫情の対象をこの軽薄な女に転嫁させてしまえと、保彦は意図的に高い位置にあるショートパンツのヒップに目線を向けていた。
(ちょっ、まだだっての)
 まだホームに入り始めたばかりなのに、せっかちな男が後ろから保彦を押してきた。減速していく電車の中でよろめき、無理やり足を進めさせられて、あの女の直後まで接近してしまった。
(……っ! やべ)
 急ブレーキにふらついて、女の美脚に体が当たった。今、保彦の体で最も突き出た場所であるジーンズの先が一瞬触れて慌てて腰を引いた。
 不意の幸運に土橋がドッと雫を迸らせて喜ぶ。
 周囲の全員がよろめいていたから、離れると距離が開いた女の背中との間にいくつもの背中が割り込んできた。ドアが開く。運行遅延で皆イライラしていたのだろう、普段なら譲りあって降りる人々が、思い思いに出口へ向かおうとしたから、ドア付近は軽いパニックになった。
 百貨店の開店までにはまだ時間があった。この土橋の体で無理やり人垣を掻き分けていくのは迷惑になるだろうから、保彦は焦ることなく少し間を置いて降りていった。
 降りる直前、ドア側の手すりに凭れて立っている若い男に露骨に嫌な顔をされる。お前が一旦降りて避けろっての。保彦は口には出さずに心の中だけで貶してホームに降り立った。
 あの日と同じ風景。
 今日上野に降り立ったのは理由があるから、テンパることはないなと、ちょっとした感傷に耽り、気を取り直して階段へ向かおうとした矢先、
「ちょっと! オッサン!」
 強い剣幕に呼び止められた。声の元を向くと、あの女が怒りの形相でこちらを睨み据えていた。
 ヤバい、勃起を当ててしまったことを責めようとしている。
 そう直感した保彦が、偶然の事故をどう説明しようか考えを巡らせようとしていると、
「痴漢! なに勝手に人のお尻触ってくれてんだよっ! ったく、死ねよ、変態!」
 女が続けてまくし立ててきた。ホームに犇めく人々が目を向け始めた。
 触る? いや、ちょっと当たってしまっただけだ。しかも手でではないし、当たったのは尻ではなく脚だ。
「いや、ち、ちがう……」


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