第一章 脅迫されたOL-22
快楽に惚けてはいても、まだ生来の勝気さが無意識下に残っているようだ。口の利き方が実に不服だった。
「ちゃんと、指示された通りに言えよっ。ずっとマンコを叩かれてたいかっ?」
「はっ……、あ、……し、汐里は……ひ、広瀬汐里は、きょ、今日からオ、オマ……」
その言葉を前に言い淀んだ汐里だったが、保彦がクリトリスに向かって強く男茎を打ち下ろすと、「オマンコ奴隷になりますっ……! い、挿れてぇっ!」
憧れの汐里が淫らな誓いを果たした瞬間、土橋が挿入を待ち切れずに、仰向けの汐里に向かって大爆発を始めた。
よかったな、オッサン。可愛い奴隷ができて。
せっかく性奴隷を獲得したのに、土橋の魂はここにない。どこを彷徨しているのだろう。俺の体を連れて。
どうやら、ただここで待っているよりも、行動を起こしたほうがいい。
――明日からそうしよう。
保彦はまだ硬度を保っている巨大な亀頭を、有無を言わさず汐里の花唇に埋めていった。
保彦は憔悴した面持ちでドアに凭れて新宿方面を目指す電車に乗っていた。この時間の車内は乗客がまばらで、躾られていない子供の甲高い歓声が保彦を苛立たせる。
昨日結局、土橋はやって来なかった。
汐里もいつ帰ったのか分からない。空が白んでくるまでずっと犯し続けてやると、まだ勢い良く噴射する精発の記憶を最後に、まさに精根尽きてそのまま眠ってしまった。
次に起きた時には、また夜だった。徹夜で淫虐に耽った疲労が丸一日保彦を眠らせた。
起きて、周囲の景色を確認し、念のため鏡で自分の姿を確認したが、やはりそこには禿げてメタボリックな、醜い中年男が立っていた。
服を破かれ、夥しい精液で汚された汐里は一体どうやって帰ったのか。
深刻に心配するわけでもなく、スマホの中身を確認すると、しっかりと奴隷宣誓動画は残っていた。陵辱が終わっても、保彦が不覚に陥って放置していても、帰る前にこれを消したり、スマホごと持ち去ろうという発想はなかったらしい。
黴じみた浴室でシャワーを浴びた。股間を洗うと、縮毛や幹、そして皮を剥いた亀頭から、湯で溶け出してくる精液と愛液を手に感じた。そのヌメりには妙な達成感があった。
廊下に丸まっているタオルから多少清潔なもので体を拭った後、この家のどこに洗濯したての下着やシャツがあるのか分からなかった。部屋中に脱ぎ散らかされた衣類。仕方なく保彦は昨日と同じ、しかしもう襟口は黒ずみ、中年男特有の臭いが燻されている服を身につけた。
腹が鳴った。だが食えるものといえば、昨日残しておいたピザしかない。土橋のカードで新しい食料を買ってもいいが、こんな時間から注文するのも面倒だったから、もうチーズが固まって味気のないピザを齧り、スマホを開いた。
誰からも着信はない。自分の携帯に向かってもう一度かけてみたが、上野からかけた時と結果は同じだった。
これだけ出ないということは、出るつもりがないということだ。
何故だ?
メッセージアプリを開く。
リリこと、汐里からのメッセージも入っていなかった。
もし家に帰ったあと汐里が「強姦された」と警察に駆け込んでいたら、今頃こんなところで悠長にピザを食べていることなどできなかっただろう。つまり、汐里はそうはしなかったということだ。されても困るが、脅迫され、腕を縛られ、好きなだけ犯されたのに、何も泣き寝入りすることはない。やはり心の中ではどこかで犯されたいと思ってるんだろうな、ビッチだから、と保彦はまるで当事者ではないかのような嘲笑を浮かべると、
『昨日はとってもキモチよかったね。汐里は俺の性奴隷になったんだから、これからは絶対服従だよ』
保彦の中で作り上げた、卑劣な中年、土橋風のメッセージを送信した。暫く見ていたが既読にはならない。
『もし、誰かに言ったら、動画、ネットに共有しちゃうからそのつもりでね。そうなっちゃったら、俺がいなくなっても、すぐに新しいご主人様が見つかっちゃうかもね? 本名も会社もバッチリ映ってるんだから』
追加でそう送っても、やはり音沙汰はなかった。
なんだよつまらないな、と保彦はメッセージアプリを閉じ、タバコを吸い始めた。上野で買ったタバコも残り少ない。
保彦はタバコを咥えたまま仰向けに寝転がり、天井に昇る煙を眺めた。
正直、自分はモテる。見てくれは悪くないし、高難度の大学に入り、なお優秀な成績を維持し続けている。卒業後を見据えて色々自己研鑽を積んでいるから、慢心はしていないが、相応の将来は約束されていると言える。
だからこそ、開業医の一人娘である愛梨と付き合うことができているのだ。厳しい愛梨の両親からも娘の恋人として好感を持たれている。