陥落-3
男の指先が生暖かくグネグネとした、複雑に絡まった柔らかい襞に触れた。その襞は蜜液でヌラヌラとしている。右手の三本を器用に動かして、絡まっている襞を所定の場所に整え、指先をさらに進めた。
スベスベとした堅めの台地に達した指は、ここでようやく媚薬を全体に塗り込めた。そして指先はその先の蜜壺の口を狙っていた。蜜壺の口は生ぬるい蜜液の中に埋もれていた。人差し指と中指の二本に蜜液を掬い、敏感な尖りを目指して手を戻していた。
そして、すでに赤々と硬くなっている尖りに狙いを定めて、しゃくるように尖りの根元から先端に向けて指の腹で一気に押し潰した。
「ひぃぃっ……」
尚代は鋭い悲鳴をあげ、腰を浮かせて身体を跳ね上げた。
男は尖りから指の腹を離すことなく、呼吸に合わせるようなゆっくりとしたリズムで指を僅かに前後に擦っている。
尚代は微妙な動きの刺激を精一杯受けようと、目を閉じ、神経を研ぎ澄まして集中していく。
「ああっ……そこ、いいぃぃ……」
右手でクリトリスへの責めが続く。すでにシーツは滴る蜜液でグッショリだった。責めを受ける尚代は、ゆっくりと腰を前後に揺すり続けている。
(いいぞ、登り始めたな)
男は無言だった。見た目はただ手を差し込んでいるだけのようだが、指先の微振動だけで確実に尚代を追い込んでいった。
「むっ……うううぅ……」
静かな部屋に尚代の籠もった喘ぎがつづく。
(いい顔して啼いてるぜ……こんな女を放っておくなんて……よし……)
「あはぁぁっ……ううん」
男は指の動きを中断した。
尚代は閉じていた目を開き、男に再開をねだる。
尚代の切なそうな表情を楽しんでから、再び擦り始める。
「あうっ……もう……もう……」
そのとき、また男の動きが止まり、指先が離れたのだ。壊れかけの機械のようだった。
離れた指先を求めて腰がもどかしく動いている。指の動きが止まったことに気がついた尚代は薄目を開け男を捜す。
「ねぇ、止めないで……続けて……お願い」
「ふふふ、いい声で啼いてくれるぜ。さすが、人妻だな。期待通りだぜ」
「ああっ、もういじわるっ!……続けてよ。悪戯はもう充分でしょ!」
尚代の焦るような吐き捨てるような声が上がる。男の手は漆黒の翳りの中に収まったまま止まっている。
尚代はもう男の指だけで何回も逝かされる寸前まで登り詰めては止められていた。
ベッドに寝てなければ、たぶん立っていられなかっただろう。
「どうして欲しいんだ」
「もう少し……続けてよ。……お願い」
「何をしてほしい?」
「ねぇ、……あとちょっとなの……ねぇぇぇ」
「どうして欲しいのか、はっきり言えよ。じゃないとこれで今日は止めるぜ」
「ねぇ、逝きたいの……逝かせて……」
「人に頼むときは、ちゃんとお願いするもんだ」
「逝かせて……ください」
「俺は、どうやってすればいいんだ」
「さっきのように、指で……」
「指でなにをするんだ……」
「えっ……言えない、そんなこと」
「言うんだよ。そしてお願いするんだ」
「ああっ……お願いします。指で、クリトリスを擦って下さい」
「それで……」
「逝かせてください。……お願いします」
「よく言えたぜ。聞こえるかい、旦那さん。……あんたの奥さんがよ。逝かせて欲しいってよ」
「ええっ……ここに主人がいるの?」
「ばぁっか!動画に録音したんだよ。……トラブルになったときには、このDVDは旦那にも見せてやらなきゃいけないだろ!……そのときに、奥さんが俺にどうしてもって、せがんだってことじゃなきゃ。……このままじゃ家宅侵入だけじゃぁなく、レイプになっちゃうもんな。……あくまで、奥さんが望んだんだから、しかなく俺が手助けしたことなんだからな。いいな奥さん。そういうことで……さぁ、逝ってもらいましょうか、奥さん。……ただ、一回逝っても止めないからね」
「そんな、ひどい……なんで、私なの?……なぜ、私をねらったの?」
「そんなの、簡単さ。……奥さんが俺好みだからさ……ずっと機会があったら一発やりたいと思ってたんだ」