欠ける月々-4
思わず、じっと見つめてしまう。
何秒か分からないけど、
貴方をこの目に納めようとした。
「…ん?」
視線に気付き、きょとんとする貴方。
「…うぅん、なんでもない…」
これ以上みていたら
好きだと言ってしまいそうだった。
その長いまつげも
意思の強そうな黒い瞳も
その大きい背中も
厚い胸板も
優しい優しいその声も…
「じゃ、おやすみなさい!」
「おぅ、おやすみ」
「ありがとうございました」
「気ぃつけて帰りよ」
「はーい」
自転車を漕ぎながら
ばいばいと大きく手を振った。
貴方も手を振ってくれた。
私は一人
帰路につく。
嬉しいのか悲しいのか、よく分からない涙が出そうだった。
ただ朝風が痛かった…
だが私はその後
絶望的に悲しい言葉を聞いてしまうのだった