〈制服と麻縄〉-7
『んん?その白いラインとスカーフのセーラー服……[純情刑事・高山恭兵]に出てた“根本みゆき”の制服じゃないかい?』
『お〜、さすが良く分かったな。前園愛っていったら根本みゆきは外せねえからなあ』
純情刑事・高山恭兵とは、愛が初めてレギュラーとして出演した刑事物の連続ドラマである。
主人公の高山恭兵という刑事は離婚経歴があり、その別れた妻との間の娘・根本みゆきとして愛は出演していた。
完全な脇役ではあったが、離れて暮らす元・父親に対する複雑な感情、そして思春期特有の素直に思いを表せない不器用な態度など、まだ演技力が未熟な愛なりに懸命に演じた思い出の作品である。
高山恭兵を演じるベテラン俳優の鬼気迫る演技や、脇を固める個性的な俳優陣。
そして彼らの魅力を存分に引き出すシリアスでスリリングなストーリーは、毎回に亘って見応えがあった。
そうした演者やスタッフの努力が認められたのか、なかなかの評判を得るに至り、結局シーズン3まで続いた息の長い作品となった。
もちろん、前園愛ファンを自負する者ならば、視聴していて当たり前な鉄板作品である。
何故に鉄板作品と言えるのか……?
それはシーズン1の途中で作られた二時間スペシャルのストーリー展開にあった。
刑期を終えて出所した男が、十数年前に自分を逮捕した高山恭兵にその時の怨みを晴らそうと凶行に走った。
高山を探しだし、毎日監視するように付け狙い……そして男は根本みゆきの存在を知り、拉致を働いたのだ……。
猟銃で脅されながら制服のセーラー服のまま緊縛され、手拭いで猿轡を噛まされて監禁されている根本みゆきの姿は、前園愛に対してある種の〈感情〉を抱いていた者の瞳に鮮烈に映り、そしてSMの類に興味のなかったロリコン共にも、要らぬ欲望を覚醒させるに至った。
〔セーラー服にはやっぱり麻縄ですよ〕
〔あの愛ちゃんが緊縛!勃起不可避!〕
〔誰か猟銃をチ〇ポに変えたコラを作ってくれWWW〕
〔前手縛りがマイナス要因。あれが後手縛りなら完璧でしたな〕
ストーリーそっちのけでロリコン共がネットで騒ぎ、禁断のコラ画像も氾濫した。
エロマンガにも“前薗愛”という紛らわしい美少女があちこちに登場しだし、決まって緊縛されての凌辱に曝される有り様となった。
あのドラマの影響は凄まじく、本人の知らぬ間に
前園愛=制服&緊縛
という方程式が出来上がり、変態ロリコンオヤジのオナペットとしての地位を確固たるものとして築いた。
前園愛という少女の魅力に気付いたロリコンオヤジ達は、毎週そのドラマを観るようになり、私服姿の愛の純朴そうな容姿までも自慰のターゲットとして選ぶようになっていった……。
もちろん、そんな事態に発展している事など知らなかった愛は、そのドラマを境にして写真集やグラビア雑誌の売り上げが上がった事を、これまでの努力の結果だと素直に喜んでいたのだった……。