水晶玉の告白-9
夫と別れてから数年後、わたしはボディセラピストの仕事を始めた。男の肌がいつも目の前に
あった。どんな醜悪な男であっても、男の肌はわたしの指を吸い、わたしは男の肌を手のひら
に受け入れる。肌はわたしの指を舐め、わたしの指は喘ぐように男の背中に風紋を描きながら
転がり、堕ちていく。
男たちの強ばった首筋、匂い立つ腋窩、藍色の翳りを溜めた背中。わたしの指に癒されていく
男の肌の呼吸は、不協和音としてわたしの耳の中で木霊する。それでもアロマオイルに溶かさ
れた肌はわたしの心を香しく滑らせ、慈悲深い安息を与えてくれた。
でもそれは、わたしの中にある不感症という幻影を安らぎに導くものであっても、欲望に変え
るものではなかった。わたしはボディケアのあとにオプションRとして、セックスを交えた客
の顔というものを憶えていなかった。陰毛の毛先まで彼らの愛撫を受け入れ、性器を深く結合
させたというのに、わたしのからだは欲望と快楽に鈍感だった。ただ、あの夜の醜悪な男のこ
とだけは憶えている。
男は肥えた下腹を抱えた、浅黒く弛んだ肌をした醜い男だった。すでにシャワーを終えて、
エステサロンの上階にあるホテルの一室でわたしを待っていた彼は、全裸で黒々とした異物を
股間にぶら下げていた。彼は確かにわたしが癒した客だった。それなのに太腿のあいだに覗い
たものは野卑で、獰猛なくらいいきり起つ濁ったものだった。
彼は持っていた黒いバッグの中から古いSM雑誌を取り出し、掲載されたある女王様の写真を
わたしの目の前に突き出した。これ、あんただろう。そう言って彼が指し示した写真は、十年
ほど前の懐かしいわたしの写真だった。あんたみたいな女、オレは好きだぜ。なぜかその言葉
にわたしは忘れていた欲望の予感を抱いた。
あんた、いい体しているじゃねえか…そう言った男には粗野で暴力的な体液の匂いが漂ってい
た。髪を荒々しくつかまれたわたしは、生い茂った密林のような陰毛の中にそそり立った彼の
ものを強引に咥えさせられた。色素を失い黒々とした彼のものはどろりとした獣臭を漂わせ、
わたしの鼻腔を歪ませ、口の中を粘らせた。でもわたしは、なぜか彼のものを咥えることを
拒まなかった。唇を弛緩させ、舌を捩りながら肉幹をしゃぶり、こすりあげた。咥えたものは
とても硬く、野卑な熱を含んでいた。彼が口の中に突き上げてくるものはますます粘りを増し、
わたしの舌に馴染んできた。上手いじゃねえか。指で男の体を撫でるより、こっちの方があん
たには向いているんじゃねえか。男は腰を揺すりながら笑った。
欲望はわたしのなかに瞬くように見え隠れした。肢を開かされて、彼の勃起した硬いものを攻
撃的にねじ込まれた。猛々しく凶暴な挿入だった。なまで入れられたものは、むくむくといき
り立ち、肉襞を荒し、肉洞を掻き回し、膣奥に突き刺さった。
私の肉洞がぎゅっと収縮をはじめ、小刻みに震えだす。何を感じているのかわからないままに
わたしの中は烈しく収縮した。彼のものを荒々しくねじ込まれ、肉奥に閉ざされたものを穿た
れた瞬間、わたしは自分の中に封じられたままになっていた欲望の蠢きを感じた。
熟れた女が悦ぶ挿入の方法だと彼はもっともらしく言い放つと、彼の両手が咽喉元を包んだ。
皮膚に喰い込む指が徐々にわたしの首を絞めた。こうして欲しいんだろう。男はわたしの首を
強く絞めあげながら、烈しく腰を揺すり、肉奥を突き上げてきた。