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水晶玉の告白
【SM 官能小説】

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水晶玉の告白-8

わたしは彼のものに操られ、奴隷のように唇を差し出す。唇は彼のものの生贄…そう思ったと
きわたしはとても神聖な恐れを感じた。指で包み込んだ彼のものをゆっくりと唇の中に導く。
口の中に溢れた唾液が彼のものに絡みつき、舌先が亀頭をなめらかになぞると、痺れるような
情感で口の中が充たされる。

彼のものがわたしの唇を押し開き、わたしは貪るように奥まで呑み込んだ。柔らかさと堅さを
交互に肉芯に含む彼のものと、わたしの唇が擦れ合う響きはとても烈しいのに、静寂に充ち、
神秘的で薫り高いものだった。

とても長い時間、わたしは彼のものをしゃぶり抜いた。やがて粘り気のある熱いものが放出さ
れ、その粘液はわたしの咽喉を焦がし、肉体の内に潜む襞を剥ぎ取り、わたし自身が知らない
悦楽の、光に充ちた湖に流れていった。

そのとき、わたしは確かにオーガズムを感じたのだった…。

  

三年ほどでわたしはSMクラブの女王様をやめた。そして、ある男性とつき合い始めた。マゾ
ヒストの彼はSMクラブでわたしの客だった。わたしの足首を愛し、わたしが吐いた唾の匂い
を知り尽くし、わたしの鞭で癒され、わたしの聖水に身を潤した男だった。それなのに鞭を手
にしないわたしと、わたしの足元に跪かない彼はとても自然に言葉を交わし交際を始めた。

プレイの部屋以外の場所で向き合うわたしたちは互いにとても眩しく見えた。そのときわたし
には彼だけしか見えなかった。不思議だった。なぜ、わたしがそんな男に恋し、なぜ彼だけを
愛しようとしたのか。わたしはこれまでどんな男に恋をすることもなく、愛を知らなかったと
いうのに。

なぜか彼だけがわたしの心とからだを裸にできると思った。そしてわたしは、セックスが恋す
ることであり、愛することがセックスだと強く思い込みはじめた。セックスという言葉だけが
ひとり歩きを始めていた。彼のものがわたしの肉洞を充たすことだけでわたしは安心した。

彼の股間にある欲情を淫唇に噛みしめ、からだの奥に導いたものを揉みしだき、流れ出た精液
の生あたたかさを肉襞に吸い取ることでわたしは癒された。そして安心と癒しが自分の欲望で
はないことに気がつかないままにわたしは彼と結婚した。


結婚はなりゆきだった。そのときわたしは、すでに自分の欲望が蝕まれ、否定されていたのだ。
夫と妻の関係は、男と女の性の輪郭を曖昧にし、混沌としたものに変えていく。結婚式での愛
の誓いはわたしの欲望を無慈悲に溶かし、白いウエディングドレスは囚人服であり、薬指の
指輪はわたしに嵌められた首輪であり手枷だった。

欲望は濾過され、無色透明の得体のしれないものに変わる。欲望を否定した瞬間からわたしの
肉奥に潜み続けていた不感症という虚ろの壊死が始まり、腐臭を漂わせる。それに気がつくの
に時間はかからなかった。彼を盲目的に愛しすぎたとき…少なくともわたしはそう思っていた
のだが…わたしは彼によって与えられるものを肯定せざるえなかった。

わたしを抱いている彼のもうひとつの顔、わたしの中に挿入された彼のものの体温、彼がわた
しに囁く言葉…そのすべてを疑いはじめ、もがき始める。いや、そんなことよりもわたし自身
がわたしの中にいないことの苦痛でわたしは喘いでいた。ベッドの中で彼に抱かれるとき、
しだいに渇いていく孤独を噛みしめ、孤独はやがて心とからだの性に破断と分裂をもたらした。

そして性愛というものを無限に続く暗い沼底にある未知のものとして葬り去った。それは苦痛
というより、絶望に近いものだった。わたしは自らの細胞を閉ざし、夫に対して欲望を失った。
何十回、何百回のセックスを彼と行っても、わたしはわたしではないと思ったとき、彼と別れ
る決心をした。彼はおそらくわたしと別れる理由も別れない理由も見いだせなかったことだと
思う。ただ、わたしの中に彼が存在すべき場所がすでに消滅していただけのことだった。


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