ファンニ-1
三年間、僕は当地の大学生として過ごすことになった。専らエスペラントを話す生活に違和感はなかった。ハンガリー語での講義にもそのうち出はじめただけでなく、活動的に行こうと決めた僕は、フェンシング部に入ったりもした。
土地も文化も人種も違うのに、毎日、思い切り羽根を伸ばしている気分だった。しかも、ビクトルの所にいながら、よその家に寄宿している気がしなかった。とにかく忙しくて、女性と付き合う機会などなかったけれども、勉強の楽しさが、気持ちを逸らせずにいさせてくれた。
とは言え、大学生活中、初めの頃、フェンシング部後輩だったファンニという女の子と二回だけセックスしたことがあった。「だった」と言うのは、急に大学を辞めて、いなくなってしまったからだ。ファンニとは付き合ったとは言えないし、その後はそういう女性も現れなかった。
ファンニはよく喋る明るい性格だった。普段の様子からはそう見えた。
背は低いがスリムで、単にスタイルが良いというよりは、スポーツ選手の体格だった。大抵、黒のタイツに黒のティーシャツ姿だった。黒髪をいつもポニーテールに結んでいた。顔は、特別美形でもなかったと思う。