第6話 母と息子-3
数々の動揺が続く中、気づけば息子の入る浴室の前に立っていた。
そして、私はすぐに着替えを渡そうと、間髪入れずに浴室の扉を開いた。
「大地・・・着替えはここに置いとく・・・・・キャッ!?」
扉を開いたその瞬間だった。
思い掛けない事に、息子はすでに洗面所の前に立っていた。
腰にタオルは巻いていたが、ほぼ全裸に近い状態だった。
私は思わず、着替えを放り投げる様に置いて、慌てる素振りで開いた扉を閉めた。
「母さんどうしたんだよ?」
不可解に思った息子は、扉越しに訪ねてきた。
「だ・・だって・・・いきなり目の前に、あなたが立ってるからよ」
明らかに、この言葉には嘘があった。
確かに、いきなり目の前に息子の姿があったのには驚いたが、何も扉を閉める事は無かった。
全裸と言っても腰にタオルは巻いており、たまに息子がリビングなどでうろつく事もあった。
普段から見慣れた光景だったが、明らかにこの時の私は、息子を男として意識してしまった。
彼の性・・・そして息子の性・・・彼らの様な少年の性と向き合う内に、未熟な身体にさえ過敏になっていた。
「しょうがないだろう・・・母さんは中々来ないし、この暑いのにいつまでも待たされたらのぼせちゃうよ」
「それは・・・そうようね。お母さんが悪かったわ。とりあえず着替えたら、早くリビングに来るのよ。ご飯が冷めちゃうからね」
私はそう言いながら、足早に逃げる様に、ダイニングの方へと戻った。
午後も3時を回る頃、私は再び寝室に籠っていた。
息子の大地は、彼と遊ぶ為に外出しており、またもや一人で取り残された状態。
彼に会えない寂しさは、いつも一緒に過ごしている息子にさえ嫉妬心を覚えるようだった。
さらに、未だに鳴る事の無いLINEの着信音。
その苛立ちと反動は計り知れなく、私の欲求へと変えて駆り立たせる。
私は再びダブルベッドの上で仰向けになりながら、バイブレーターを往復させていた。
今度は、替えたばかりの黒のストッキングを汚さない様にと、ショーツと一緒に太ももの半分まで下した。
それでも、微かな潤いの痕跡は残り、息子の性と向き合った証を物語っていた。
丸み込まれた、ティッシュペーパーの塊から発せられたオスの香り。
まだ未熟ながらも、脳裏に焼き付く、部活動などで鍛え上げられた息子の身体。
その先々で私は、思い掛けずにも溢れ出ていた。
血の繋がりのある、禁断のボーダーライン。
私は息子を彼に置き換えて、その危険な狭間を快楽と供にさまよった。
「はあ・・・はあ・・・・・・」
私は、声を押し殺す様に、快楽に身を任せる。
朝方とは違い、いつ息子が帰ってくるかも分からない為に、警戒はしていた。
ショーツとストッキングを太ももまでしか下げないのも、その時の為に、すぐ対応できる様にと考えていた。
それでも、息子の帰る時間帯は、ほぼ夕方近くがほとんどだった。
私はそれを良い事に、より深い妄想の世界へと入って行った。
絡みつく、汚れの知らない未熟な身体。
彼に抱き締められる様に、息子の身体に置き換えながら思い返した。
快楽が増せば増すほどに、禁断のボーダーラインは近づこうとする。
もう・・・彼か息子か誰なのかも分からない。
私は、彼と息子の性に立ち入る事によって、益々少年に対する性癖を深めていた。
若い身体に包まれて迎える、至福の瞬間に憧れを抱く様に・・・・・・・。
「あっ・・・あっ・・・・・・」
もう、歯止めは利かない。
押し殺した声は、頂点に向けてのシグナルへと変わっていた。
行為を続けてから30分は過ぎようとしていただろう。
私は、二、三度バイブレーターを深く刺し込むと、頂点を極めた。
その瞬間に脳裏に焼き付いたのは、私を抱きしめる様に絡みついてくる息子の身体。
この時に、彼に置き換えたのか定かでも無い。
ただ、誰でも良い、若い少年の身体を私は欲していた。
それは、息子自身にでは無く、その肉体に溺れる自分に歯止めが効かなくなっていたのかもしれない。
このままだと、気が狂いそうになるほど、日常生活に支障をきたしかねない。
一つ屋根の下に暮らす実の息子にさえ、欲求を募らせる想いを抱くのだろう。
・・・・・・近親相姦・・・・・・
私の心の奥底に眠る、身の毛もよだつ言葉が浮かんだ。
私は目を見開く様に天井を見上げると、自分自身に怯える様に両肩を抱いて震えた。
何かの拍子に越えてしまいそうな恐怖。
息子さえ見境なるほどに、私は少年の性に開花され始めていた。
まだはけ口を知らない未熟な性を、自分自身で受け止める事を・・・・・・。
ここで私は、一つの事を心に決めた。
彼の性と向き合う願望を、確実なものへとする事。
つまり、向き合うと言う生半可なものではなく、必ず彼と身体の繋がりを持つ事である。
その決心こそが、私が息子の性に抱く迷いを断ち切る、道しるべとなるはず。
危険なボーダーラインを抜け出すには、やはり彼を愛するしかない。
むしろ、私の彼に対する原点の気持ちに帰っただけの話だった。
ここまで来ると、親子ほど歳の離れた彼とのアブノーマルな愛さえ、血の繋がりが無ければ正常なほどに思えてきた。
−つづく−