週末-7
タクミは友達のいる
106号室の部屋に戻った。
部屋のドアを開けると、
曲はかかっていない。
タクミが皆に向かって言う。
「ただいまー。」
「お帰りー。
、 、、疲れた?」
健が冗談まじりに言う。
タクミは
冗談の中に心配してくれている
気持ちがある事を感じとる。
他の友達も、
なんとなくタクミと由佳の事が
気になっている様子だった。
「うん。 疲れた。」
「結構長く話してたね。
由佳は? 帰ったの?」
「んー? うん。
カラオケしたいか聞いたんだけど。
怒って帰っちゃった。」
「そっか。」
それを聞いていた真由美が、
手を顔の前で合わせながら
タクミに謝る。
「ほんっとー! ごめん!!
私が、、
いるって言っちゃったから、、」
「真由美のせいじゃないよ。
カラオケあるのは元々、
知ってたんでしょ?
話聞くって決めたのも俺なんだから。」
「でも、、 」
「駄目。
次謝ったら、、 、」
「?」
「襲うよ。」
「え!? 〜っ、、
、、、。」
それを聞いていた
真由美の隣に座る女友達が言う。
「今! 襲われてもいいって
思ったっしょ!?」
「ちょっと! 思ってないから!
いや、ちょっとは思った?かも、
一瞬!! 一瞬ね! 」
「ウケんだけどー!!」
その会話に皆が笑った。
それから7人は、
またカラオケを楽しんだ。
しばらくして、
友達の歌を聞きながらタクミは
ポケットからスマホを取りだし、
ラインの画面を開く。
ちづるからメッセージが届いていた。
【浴衣、着たよ(*^^*)
お料理おいし〜♪】
メッセージと共に
写真が添付されている。
ピンクの浴衣を着たちづるが、
料理皿の小鉢を持っている。
広そうな和室で料理全体も
写真に写っている。
ちづる隣にはビールグラスを持った
女の人が満面の笑みで
ピースをしている。
30代ぐらいのその女性は
ちづるとの距離が近く、
肩をよせて親しげに見えた。
「、 、、、。」
楽しそう
、 、 、、。
メッセージがきた時間は
8時すぎだった。
今の時間は9時だ。
タクミは返信を送る。
【楽しそうだね。
お酒もいっぱい飲んだんでしょー?】
そう送ったが既読がつかない。
きっとまだ宴会中なのかな、
とタクミは思う。
タクミはスマホをポケットにしまうと
画面を見て恭介の歌声を聴く。
ふと、真由美達の顔を見て、
由佳の言葉を思い出す。
「、 、、。」
なんか ちょっと
傷ついたかも
りさちゃんの事 俺
ちゃんと 好きだったのになぁ
「、、っ はーー。」
平等?
平等って
なんだよ
健は健だし
真由美は真由美
同じじゃないのに
平等?
「、 、、 はー。
分かんね。」
「 何が?」
恭介の歌っている曲は
穏やかなバラードだった。
タクミの隣にいる健が、
タクミの声を聞き取った。
タクミが言う。
「、、、俺って、、。
自分の事だけを
好きなように見える?」
「 え?」
「、、、。」
「由佳に、言われたの?」
「うん。」
そういや昔
りさちゃんにも言われたな
「、、俺にはそう見えないよ。
だって、俺は、、」
「 ?」
「ホモじゃないから。」
「、、 ふっ、 」
「可愛さあまって、憎さ100倍?
っちゅーやつですかねー。」
「そんな言葉だったっけ?」
「まぁ、タクミは、、
冷静な人に見えんのかもね。」
「 、、。 損ですね。」
「まーねー。」
「健は?
あの子、名前はーー、、、
ぁ、。直美ちゃん。
うまくいってるの?」
「、 、、ノーコメント。」
「あら。 そう。」
「、、 女ってさー、、。」
「ん?」
「強いからたまに、怖くない?
あれは、、なんでなの?」
「 〜っ ふっ!!
ちょっ、、ウケんだけど 〜っ
っつーか、本当そうだね。」
タクミはケラケラと笑う。
健もタクミにつられて笑った。