週末-6
由佳はそう言うと立ち上がり、
フロントから店の奥に進む。
タクミは、
あっちとはどっちだろう、と
考えながら由佳の背中に話しかける。
「皆の所行くの?
106だよ、部屋。」
「、 、 、、、。」
由佳は無言で歩き皆のいる
106号室の前を通過した。
そのまま、ドアの開いている
別の部屋に入った。
部屋のソファーに座ると、
自分の隣に座るように
ソファーを指差す。
タクミも部屋に入りソファーに座る。
由佳が言う。
「ドア。 閉めて。」
「え?
でも他の客 、」
「その時は私が謝るから。
閉めて。」
「、 、 、、。」
タクミは、
黙って部屋のドアを閉めて
ソファーに座る。
再び、沈黙の時間が流れる。
テレビ画面からは、
様々なアーティストが
自身の歌の紹介をしている。
しばらくその音を聞いていた。
タクミが口を開く。
「でー、、話って?」
「 、、、うん。」
由佳はお尻を浮かせて、
タクミの隣に座りなおす。
タクミは、
距離の近さに違和感を感じた。
タクミが言う。
「近くない?」
「そう?」
「うん、、。」
「 、、、タクミ。」
由佳は手を伸ばし、
ソファーの上にあるタクミの手に
自分の手を乗せた。
タクミは驚く。
「、 、、。 話って?」
タクミは、そう聞きながら
由佳の手の下にある自分の手を
由佳から離した。
お尻を浮かせて由佳から離れ、
人1人座れるほどの間隔をあける。
その行動が
由佳を拒否したものだと
由佳に伝わる。
「、、、。
彼女とうまくいってんの?」
「え? うん。」
「そう、、。」
「、、。 で、話って?」
「、 、 、、。」
「ないなら、戻っていい?」
「 ないよ。」
「 え?」
「話なんて、ない。」
「、、じゃあ、俺行くわー。」
タクミはソファーから立ち上がる。
そのままドアに向かい、
ドアノブに手をかけようとした
その時。
由佳がタクミの背中に声をかける。
「待って! 」
「 ? 何?」
「嘘だよ。話、、ある。」
「 ?」
「私 さ 。
タクミと会ったりするように
なってから、
りささんと話したんだよ。」
「 え?」
りさちゃん ?
っつーか 話って
昔の話? ?
「学校にいた時も
結構仲良かったから、うちら。
りささん、
私とタクミの噂を聞いたみたいで、、。」
「、 、、。」
「私のバイト先のコンビニ、
りささんよく使ってたから。
5月、、ぐらい?
少し話したの。
りささん、、
なんて言ってきたと思う?」
「、 、、さぁ。」
「タクミと付き合うのは
やめた方がいいって、
言ってきたんだよ。」
「、 、、。」
「まぁ、、その時は、
余計なお世話だと
思っちゃったんだけど。」
「、 、、。」
「でも、りささん言ってた。
タクミは私だけを好きって気持ちは
最後まで持ってくれなかったって。」
「、 、、。」
「タクミは、
どんな子と付き合ったって
その子は、、、。
(私を選んでくれた)って気持ちを
持てないで苦しむと思うって、、。
そう、言ってた。」
「、 、、。」
「それで、、私も結局、
そうだった。」
「、 、、、。」
「まぁ、私は、、、。
彼女には
してもらえなかったけど。」
「、 、、。」
「だから、
タクミの今の彼女も不安だと思う。
可哀想って思っちゃう。
自分を選んでくれたって気持ちを
ずっと持てないんだよ?
どういう事が分かる?
それって、、、
恋人として、本当に不幸だよね。」
「、 、、。」
「、 、、。」
「、 、 、、終わり?」
「、、、。」
「行っていい?」
「、 、 、、。
行けば?」
「 あ、。
お前、残りたい?」
「 、、え?」
「カラオケ。
皆としたいなら、俺は帰るよ。」
「、 、、 〜っ、 」
「どーする?」
「、 、そーゆー所、、!」
「 ?」
「タクミって、〜っ
いつも冷静だよね。
私を、、
私達の事を、、皆!
なんか、〜っ 平等に
見てる感じがする 〜っ」
「 、、は? 平等?」
「タクミはね、結局、、
冷たいんだよ。
人の事、馬鹿にしてる 〜っ !
自分の事しか、
好きじゃないんだよ!」
「なにキレてんだよ。
でー、、残るの?」
「〜っ、! 〜っ、私は!!
〜っ、帰る! 」
由佳は立ち上がる。
ドタドタとドアまで近づくと、
「どいてよ!!」と言って
タクミを思い切り突き飛ばす。
タクミは押された勢いで
ソファーに座る。
由佳が出ていき、タクミは
少しホッとした気持ちになり、
思わず大きくため息をついた。
「 っ はーーーー、、、」
しばらく放心した気持ちで、
部屋のテレビ画面を見ていた。
すると、4〜5人ほどの男女の声が
聞こえてくる。
この部屋に近づいている様子だ。
タクミは慌てて部屋から出た。