温泉旅行-10
店の中の二人が 見えたり見えなくなったりする・・・
それを少し気にしながら
できるだけ平気なふりをできるように
日差しを見上げてみた
サングラスをしているとはいえ
かなりまぶしくて 目を逸らしてしまった
少し長い時間のように感じながらも
ベンチから動かなかった
「お待たせ!」
彩香が いつの間にか近くにいた
少し驚いてしまった・・・・
そんな彩香のVの襟の辺りに
見慣れない革製の飾りのネックレスがあった
「これ?翔に買ってもらったの 遅い誕生日プレゼントって」
「ふーん なかなか 似合ってるじゃん」
「あ・・・・・今 嫉妬したでしょ?」
どきっ・・・・
嫉妬した
嫉妬したよ
「いや、それくらいで嫉妬してられるか・・・」
「かわいくないなぁ・・・強がってるの?」
そうだよ
そうだって
「強がってない・・・翔と彩香は 幼馴染なんだから仕方ない」
「・・・・・・・・そうだね 幼馴染だね」
彩香は 俺の隣に座った
「幼馴染だけど 恋愛は してないからね 今夜 過去の話 何でもしてあげるから」
彩香は 少し弱い声で話しかけてきた
さすがに 悪かった気がした
そこに 翔がゆっくりと歩いてきた
「神谷にも 何か買ってやろうか?遅い誕生日プレゼント」
翔なりに 気を使ったのかもしれない・・・
「いらないよ 男からプレゼントもらっても嬉しくないわい」
「ははは そうだよな!」
翔は ベンチに座ることなく
立ったまま 俺たちを見ていた
「ありがとな 彩香が 喜んでるよ」
「喜んでもらえたら うれしいぜ、でも 選んだのは店員のお姉さんだけどな」
彩香は ペンダントの飾りを手に取って見ていた
セミの鳴き声が 少し静かになっていた