官能-1
カメラのアングルはベッドを横から映すかたちで固定されていた。正面にはベッドサイドに座る二人。太田君の左手は妻の右肩を包み、右手は彼女の顎に添えられている。太田君は着衣、妻は下着姿であった。彼の顔が近づく。彼女は鼻が邪魔にならないように顔を傾け、それを迎えた。
初夏、日差しの照りつける中、小一時間も散歩した後である。汗の一つもかいているであろうに、妻はシャワーを浴びることなく、太田君との深い舌の交わり合いを楽しんでいる。彼は右手をショーツの中にもぐり込ませ、優しく摩り次第にその動きを速めて行った。重ねた唇の間から早くも吐息が漏れる。
「さっきは、どんな気分だった?」
「恥ずかしかったに決まってるじゃない」
「恥ずかしい以外は?」
「え? すごくドキドキしたわよ」
頬を赤らめる妻に太田君はショーツから引き抜いた指を差し出した。
「こんなに濡らしておいて?」逃げるように顔を反らす妻に、太田君は指先を何度も見せつける。「ほんとは気持ちよかったんじゃないの? ドキドキして楽しかったんじゃない?」
確かに彼の指先は濡れていた。あれほど濡れにくい体質の妻が濡らしているということか? 太田君の言葉に顔を横に振る彼女。彼は再び右手をショーツの中に差し込み秘部をまさぐる。妻の吐息がどんどん荒くなっていく。水面を軽く何度も叩くような音が聞こえ始めた。その音はどんどん大きくなっていく。太田君の手が激しく妻の秘部をまさぐる音であった。僕が妻のソコから聞いたことのない音であった。
「どう? 聞こえる?」
妻は首を横に振るが、荒い吐息と共にピチャクチャと音は鳴り響いている。太田君の左手がブラジャーの肩紐にかかると、妻は自ら手を背後に回しブラジャーのホックを外し、脱ぎ去った。彼は露わになった乳房に愛撫もせず、妻のショーツに手を掛ける。脱がせやすくするため妻は腰を浮かせた。ショーツをヒザまで下ろすと僕の見たことのない光景がそこにあった。妻の薄い陰毛がぐっしょりと濡れそぼっていたのだ。妻は太田君の背中に手を回し、彼の細くも筋肉質の身体を指先で愛撫し唇を求め続け、両足を器用にくねらせながら自らショーツを脱ぎ捨てた。僕はその姿だけでも驚いていたが、それだけでは終らなった。唇の間から彼女の舌が覗いていたのである。決して越えることのない口腔内という領域を飛び出し、彼の唇を愛撫し舌を求めている。
太田君は妻をベッドに倒す。ヒザを少し曲げ広げられている妻の脚は、男を迎え入れる準備をしていた。太田君はズボンとトランクスを太ももの半ばまで引き下げ、妻の脚の間に入り陰毛の生えた恥骨に固いペニスを擦りつけた。妻は太田君の後頭部に手を回し、彼の顔を引き込み、自らも顔を近づけ口づけを求める。動き続ける彼の固いペニスを秘部にあてがうように、両足を掲げ腰も浮かせていた。
太田君は突然妻から顔を離し、腰の動きを止め尖らせた唇を突き出す。妻は彼の動きが止まったことを気に留めず、曲げた足を揺らしながら浮かせた腰を動かしていたが、やがて彼の尖らせた唇に気付くと、ベッドにヒジをつき上体を起こして彼に口づけをした。やわらかくほどけた彼女の唇に対し、彼の唇は依然固く突き出されている。それをほぐすように妻の舌は太田君の固い唇を愛撫した。彼の顔が再び離れる。妻は半開きの口から舌を出している。太田君が口を大きく開ける。妻はそこを目指した。まるで何かを理解したように、大きく口を開け、長く突き出した舌を彼の中に押し込み口腔や舌を犯す。太田君の頬が変形するほど激しいものであった。そのままベッドに押し戻された妻は両手で彼の背中にしがみつく。しかし彼の腰は動かない。
「欲しい?」
太田君を見つめる妻はあからさまに物欲しげであり、その手を彼の固いペニスに持っていき、自らそれを膣口へと案内した。それが妻の返事であった。彼は一気に腰を突き上げる。濡れそぼった妻の陰部はいとも簡単にそれを受け入れた。
「んっ、あぁぁぁ」
妻の合図に太田君は腰を動かす。まともな愛撫は無かったのに、彼の動きに合わせ喘ぎ続け、秘部からは絶え間なく激しくいやらしい濡れ音を立てていた。彼は激しく妻の股間に腰を叩きつけ続ける。彼は浮き上がっていた妻の両足を抱え上げた。妻の足の裏が天井に向く。彼はより激しく、より膣の奥深くに固いペニスを押し込み続けた。
「ぬはぁーっ」
妻の腰が痙攣した。イッたようだ。だが、太田君のペニスは固いままである。彼は前日、職場で妻の履いていたショーツをもらい、それをオカズにその晩何度も抜いて、今朝も三回抜いてきたらしい。正直、若さを感じた。昨夜パートから帰ってきた妻に、何事もなかったか尋ねても、「別に」と明るい笑顔でいつもと同じ答えが返ってきた。彼からそのことを聞くまで、彼女があの時ノーパンだったとは気付かなかった。
太田君は更に腰を振り続ける。ほどなく妻は2回目の絶頂を迎え、太田君は腰を引き妻のお腹の上に射精した。快楽の余韻を楽しみ荒い息が整うと、彼女はティッシュを手に彼のしぼんだペニスをきれいにふき取り、自信の身体も拭う。いつも僕がしていた、終わりの儀式を彼女がしていた。