て-3
「違うの!そんな不正をしようなんてしてない!」
「明日香?」
「おい!明日香!今更自分だけ逃げる気か?」
私につかみかかろうとした重田さんを啓は手で押しとめた。
「マスターファイルを本部長のパソコンに送ろうとしたの」
「え?」
「私がやらなくても重田さんは他の誰かをたぶらかして
マスターファイルを書きなおすかもしれない」
「・・・・」
「そんなことになったら啓たちのチームがどうなるかなんて事は私にも分かる」
「・・・うん」
「だから、書きかえられないうちに証拠として半年前の日付のままに
本部長に送ろうと思ったの」
「明日香?」
重田さんが静かに、私の名前を呼んだ。
「重田さんを愛してなんかいない!」
「おい!明日香」
「啓だけを愛してる」
「やめろ!明日香っっ!」
重田さんが呼ぶ私の名前は、愛を感じる事が出来ない。
私は大声を上げ続ける重田さんを無視し続けた。
「自信を持って。啓。私が愛しているのは啓だけだよ」
「あすか・・・」
啓が呼ぶ私の名前は、とても優しい。
「啓を貶めるようなことはしない」
「じゃぁ、どうしてこんなことをする前に話してくれなかったんだ?」
「啓を関わらせたくなかったの」
「・・・・」
「重田さんは私の弱みを突くように脅してきたの」
「・・・・」
「こんな事に巻き込みたくなかったのよ」
そう言って啓の胸に飛び込んだ。