再び、青森へ…-6
入場券を受付に出し、温泉に入る前に皆で辺りを見回す事にし、佐伯君、それに私はさほど珍しい光景じゃないけれど、バスの4人からしたら新鮮で。
「やっぱ温泉と言えば美肌よねー。」
「そうねぇー、誰かさんに思いっきりボールで殴られたから。」
「いやっそれは貴女があの子に酷い事言うから。」
あの頃の私は魔女、だったのかもしれない。
「…私ってば欲しい物があると何でも手に入れたくなるのよね、それを邪魔されると。」
「早乙女、先輩。」
正直、そんな自分が嫌になる。
「私も、また普通に仲の良い部活の先輩後輩になれると良いなと思ってる。」
「…あの時はボールぶつけてゴメン。」
「私も、後で謝れるかな。」
「……先輩って意外と活発的なんですね。」
「それどういう事よ?」
「勿論良い意味でさ、にしても先輩ってほんとグラマーよね、モデルみたい!」
「ありがと、後でお気に入りの洗顔料使わせてあげるね。」
「いやったーっ♪」
もどかしい嫉妬がなければ私達こんなにも息が合うのか。そして彼女は一条君って子の元へ行き、その入れ替わりの如く私の元へ来たのは。
「あら、殺人鬼さんこんにちは。」
「!…ど、どうも。」
張り合いないなぁー、あの頃の彼は嫉妬と欲望に満ち溢れていたのに。
「冗談よ、そんないじめられた子供みたいな顔しないで。」
「……。」
何よ、そっちから来た癖に何も言わないの?…きっと何か言いたいんだろうけど。
「僕は、こじれた人間関係を修復したいと思いここに来た。」
「?」
未来から来た正義の使者か。私と小鳥遊君の関係と言えばお互いに好きな人が居て、それで邪魔な恋敵が居て、だからあの日佐伯君に同情を引くよう猿芝居するよう持ち掛けて。
その後、失敗に終わりむしゃくしゃした私が腹いせに彼の黒板にあの告発文を。
「あぁ、まだ怒ってるの?私があんな落書きをして。」
「良いよそれは、ホントの事だし、されても仕方ないよ。」
「…まっでも助かったよね、その時に佐伯君が助けてくれたんだもんね。」
「うん、そのお礼も言わないと。」
「その後だってあの稲葉さんが色々と励ましてくれたんでしょ?」
「そうだね……。」
「どうしたの?」
「あっ、いや何でも。」
「?…とにかくお互い頑張りましょうね、貴方が佐伯君を受け入れるように私も柊さんを受け入れるように。」
この後彼の身にとんでもない災難な降りかかる事など私も誰も知る由がなかった。