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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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再び、青森へ…-5

青森へ引っ越してからもう一か月以上は経った、最初に感じていたワクワク感も今はない
都会へ上京する者とほぼ同じ感覚、ロープウエイに郷土館にそれに文学館や神社もほとんど見飽きた、けど兄貴からここへ来た時に色々と教えて貰いというか一緒に観光巡りして
故に何処に何があって、その名所の魅力も語れるようになったの良い。

「中で座って待ってれば?」
「先輩…。」

温泉の前で今か今かと佇む俺に、自動ドアから真彩先輩がやってきて。

青森へ行くのは大変と言う割にしょっちゅうここへと言うか俺に会いに来てくれる、最早先輩が居るのは当たり前のような感覚だ。

今回4人が来る事だって、彼女は関係なくない、先輩にとっても柊さんを初め気になる人は結構いるのだから、そうなると最早オールスター全員集合だな。

「でも本当に良いの?」
「何がだよ、連や巴にまた会えるんだぜ、電話とかじゃなく直接。」
「そうだけど…。」

彼女が示しているのは無論その二人じゃない、後の二人だ、柊さん…それに小鳥遊。
つまり元カノとその今付き合っている嘗ての恋敵。

先輩はそれを心配してくれているんだ。

「正直驚いたよ、いや…来るのは良いんだ、けどアイツも来て、それで。」

友達になりたいって、何言ってるんだ…と、俺がこれまでにアイツに何をされたのかそして俺がアイツに突っかかって、その喧嘩の挙句ナイフで刺されて、危うく。

「話で聞いたけどホント変わったよねアイツ。」
「あぁ、元はあぁいう人間だったのかもだけど。」

先輩からしてもアイツとは少なからず接点がある、悪魔の入れ知恵を授け、良いように利用され、腹いせに俺を刺した事をクラス中に言いふらして。

俺にとっても彼女にとっても気になる人物がこれからやってくる訳か。

「それで…なるつもり、お友達に。」
「なっ、それは……。」

アイツと俺が友達に、柊さんに電話して聞いても冗談でもないし、柊さんが言い出した訳でもないし。

個人的には少し嫌だな、普通恋敵とは親しくするもんじゃないし、でもそれは柊さんとまだ恋人だった頃の話、今はお互いを思い別れて、それからアイツと付き合いだした、蓮に
聞くと本当に幸せそうだとか…。

俺がアイツを憎んだ一番の理由は嘗て彼女を取られるから俺を刺したからでもない、柊さんを悩まし苦しめたからだ、でも今はそれすらないのなら。

「あっははぁ!」
「どうした突然?」
「いやだって人生ってホント不思議だなぁーって。」
「?」

明るく笑いだす彼女。

「佐伯君と私は付き合っていた、そこに柊さんが現れて、私は貴方から別れを告げられて
二人は付き合いだし。今度はそこに小鳥遊君が現れて色々あったけど二人は別れて柊さんと彼は交際し、私も最初は貴方のいる青森まで押し掛けて柊さん煙たがってたけど別れて
今は恋人でも何でもないけどそれでも貴方の身を心配する彼女にとって私は良い存在と化して…。」

軽くまとめるとそうなるな。先輩が何度も来てくれるお陰で俺はとっても助かっている。
未だ慣れない家事や料理を手伝ってくれて、独りで寂しい時もこちらの気持ちを見ていたかのようにタイミング良く電話をくれたり、今いる北海道からこの青森へいちいち往復するのだって交通費からも決して容易な事じゃない筈なのに。

退屈で寂しい休日も彼女を誘い、この青森で知り尽くした観光名所を周り、得意気に蘊蓄を語り、彼女をリードしてそれはもう中々楽しいものだった。

でもこれってどうなんだろ、俺は彼女の事を…。先輩自身別に俺に振り向いて欲しくてやってる訳ではなく、ただ俺の事を気に掛けて。

「あ、あのさ先輩っ!」
「うん?」

後ろに両手を組み、上機嫌な素振りで振り返る。

「俺は、先輩の事を…。」
「あっ、バス来た!……一行も居るわ。」

タイミング悪くご一行が到着し、大事な話は切り出されずにいた。


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