若い男-3
望未に興味があるのかどうか分りずらい反応だ。
「それにしても、豊川さんってホントに若く見えますよね。今日、歳を聞いてびっくりしましたよ」
(掛かった!!)
「あら、ホントお上手ね。じゃあランチでもごちそうしちゃおうかな。なんて」
「い、いえ。是非」
「本当に?おばさんをからかってるんじゃなくて?じゃあ、この間お友達とランチして美味しかったカジュアルイタリアンのお店でいいかしら?」
「ええ、何でもイイです。豊川さんと一緒なら」
普段のハキハキした感じではなく、少しモジモジした言い方が初心に感じた。
この言葉から、望未へ意識が向いていることはおおよそ検討がついた。後は、どのタイミングでどういった最終アプローチをすれば良いのかを考えるだけだろう。
ランチの最中の会話には気を遣った。あまり露骨にアピールをして警戒されては元も子もない。せっかくここまで順調に進んでいるのだ。レストランという空間で二人きりなわけだし、目の前から逃げ出す心配も無かろう。さりげなく、さりげなく事を進めれば良い。
ドルチェが出てくるタイミングになった。そろそろ何か手を打たなければ。少し焦燥感に駆られ始めていたその瞬間、和真から次の提案がされた。
「豊川さん、これから買い物ですよね。良かったら付き合いますよ。ランチをごちそうになったお礼に、荷物持ちをさせてください」
(完全に掛かった)
飛んで火にいる何とやら。和真の方から飛び込んできた。
望未はガッツポーズをしたいぐらいに歓喜が全身を駆け巡った。
「ええっ!?そんな悪いわ。先生もご予定があるんでしょう」
満面の笑みを見せたいのを押し殺しつつ、いかにも迷惑でしょうと言わんばかりの答えを返す。
フリーなのは知っている。十中八九予定は入っていないはずだ。それを知った上で謙遜してみた。
「いえ、今日はストレッチ教室以外はフリーですから。時間はいくらでもあります・・・あ、自分なんかと一緒じゃ迷惑でしたか」
「全然そんなことありませんよ。先生みたいに若くてカッコイイ人と一緒に買い物できるなんてかえってラッキーだわ。それじゃあ、お言葉に甘えゃおうかしら。でも本当に迷惑じゃないですか?わたしのようなおばさんと・・・」
和真が申し入れしてきたので仕方なくと言った雰囲気で場を進める。
「い、いえ。おばさんだなんて少しも思ってません」
ここまでの過程は、自分の描いたイメージと多少の違いはある物の、結果としてシナリオ通りに進んできている。最後は、どうホテルに誘うかだ。最大のポイントがやって来た。ここで失敗すれば今までの計画が水の泡になってしまう。ここは慎重かつ大胆に事を進めなければならない。
ちなみに、このレストランから程近くに数件のラブホテルが立ち並ぶホテル街がある。そこまで考えてこの店に誘っていた。
和真はそんなことにはまったく気付いていないはずだ。
お店を出て、二人並んで歩く。ここではあえて距離を置いた。
何気ない話題で盛り上がりながら、ホテル街への入り路に差し掛かった。
望未は一気に和真に擦り寄り、腕を組んで強引にホテル街への道に引きずり込んだ。
和真は一瞬驚いた顔を見せた。
「えっ!何するんですか?」
「先生、エッチなことしましょ」
望未の顔は、もうすでにいやらしさで一杯になっていた。
和真は成すがままにホテルに連れ込まれた。
何は何だか状況がよくわからなかったが、冷静になると、今までの挑発行為が頭をよぎった。そして、望未が誘ったのは偶然では無いことを悟った。
何か裏があるのではと和真は勘繰ったが、そこはまだまだ若くヤリたい盛りの青年。ホテルの部屋にまで連れ込まれ、欲情を煽られたまま何もせず帰るなんてことは耐えられない。和真もヤルモードに入っていた。
「先生ごめんね。どうしても先生とシたくて・・・旦那とも上手くいってないし」
少し涙目を見せながら・・・もちろん演技だが。
「僕で良ければいくらでも慰めてあげますよ」
もう欲望を抑えきれなくなった和真は、三流エロ小説に出てきそうなベタなセリフを言って、ガバっと望未を抱きしめた。
そして、目の前に迫った望未の唇を優しく奪った。
最初は唇を軽く合わせたソフトなキスだったが、望未の方から積極的に舌を絡ませ始めると、互いの欲望は完全に開放された。
まだ若さに任せた荒い唇の吸い方だが、それはそれで野性味溢れる体育会系ならではのワイルドなキスだと受け取った。
こんなキスを旦那からされれば、すぐさま手で払いのけているに違いない。
相手が替わるだけで、こんなにもキスの感じ方が違うのかとも思った。
「脱がせて」
望未は立ち上がり、和真の手を引き寄せた。
上着とスカートを脱がせ、ブラとパンティーだけの下着姿になった。脱がされている最中、和真の手が小刻みに震えているのに気づいた。スカートのファスナーを降ろすのもぎこちない。
(もしかしたら、そんなに経験が無いのかもしれないわね)
そんな姿もカワイイと思える自分は、もう完全に和真だけを考えることしかできない状態に陥っているのだと自覚した。
薄紫色の揃いの下着は、うっすらと透けており、濃い目の色をした乳首と黒々とした豊かな恥毛が下着越しに見えている。
和真は息を呑んだ。自分と近い年の女性としか経験の無かった和真は、自分よりも一回り以上年の離れた色気盛んな女性のフェロモンに興奮していた。
望未は微かに微笑み、和真の服を脱がせていく。
Tシャツを脱がせると、ほのかなボディーソープの香りと共に、筋肉質な胸板が現れる。薄く肌の張りが無くなった夫の胸板とは大違いだ。そんな若い男のそっと乳首を触ると、「ううっ」と短く呻きビクンと反応した。