笑-5
早々にお会計を済ませて啓に送ってもらい、部屋に入ってお水をもらう。
「ねぇ。啓?」
「ん?」
「泊ってく?」
私のそんな問いかけに、ものすごく自然に。
一瞬も考えず
「いや。帰るよ」
と、私が飲み終わったグラスを受け取った。
「泊って行けばいいじゃん」
「まだ電車あるしな」
そうじゃないんだって。
「エッチがしたいって言ってんの!」
しまった。
そう思った時はもう言葉が口から出ていた。
「え?」
聞き返さないでよ。
これでも恥ずかしいんだから。
「啓とエッチがしたいの。泊って行って」
ベッドに座って啓に向かって伸ばした私の手を
啓はじっと見つめてゆっくりと口を開いた。
「本気にするぞ」
「本気にしてよ」
「後悔してほしくない」
「しないよ」
私は啓に手を伸ばし続ける。
「重田さんを完全に忘れるまで待てるから」
それなのに私の伸ばした手を取って、手首の内側にキスをする。
その行為が何とも優しくいやらしかった。
「忘れさせてよ―――啓が」
その言葉を聞き終わらないうちに
私はグンッと手を引かれ
気がつけば啓の腕の中にいた。