は-8
「そうだな。とりあえず飲みに行くか」
啓はそう言って嬉しそうに私の手を握る。
そのつないだ手を、じーっと見つめる私に
「あ。イヤだった?」
そう聞きながらも離そうとしない。
「イヤじゃないけど」
この年になって恥ずかしいじゃん・・・・
啓にそんな気持ちは微塵もないらしく
「じゃぁいいな」
そういって手をつないだまま歩き出した。
人に自分の考えを押し付けない、人のことを1番に考える啓が。
会社の前でこんなことをするなんてちょっと驚き。
でも、逆に。だからこそ思いきり好かれてるんだと感じることができた。
「ねぇ。啓」
「ん?」
「私のこと好き?」
私も、28にもなってこんなことを会社の前で聞いてみる。
「好きだよ。誰よりも」
そして恥ずかしげもなくそう答える啓に
ビックリして、うれしくなった。
好きと言われることが、こんなに嬉しいなんて忘れてた。
私は啓の横顔を見上げながら、久しぶりに幸せな気分になった。