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君が泣かないためならば
【女性向け 官能小説】

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「そうだな。とりあえず飲みに行くか」

啓はそう言って嬉しそうに私の手を握る。

そのつないだ手を、じーっと見つめる私に
「あ。イヤだった?」
そう聞きながらも離そうとしない。

「イヤじゃないけど」

この年になって恥ずかしいじゃん・・・・

啓にそんな気持ちは微塵もないらしく
「じゃぁいいな」
そういって手をつないだまま歩き出した。

人に自分の考えを押し付けない、人のことを1番に考える啓が。
会社の前でこんなことをするなんてちょっと驚き。

でも、逆に。だからこそ思いきり好かれてるんだと感じることができた。

「ねぇ。啓」
「ん?」
「私のこと好き?」

私も、28にもなってこんなことを会社の前で聞いてみる。

「好きだよ。誰よりも」

そして恥ずかしげもなくそう答える啓に
ビックリして、うれしくなった。

好きと言われることが、こんなに嬉しいなんて忘れてた。

私は啓の横顔を見上げながら、久しぶりに幸せな気分になった。




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