父の温もり(楽屋話1)-2
「で? 夏輝はどうだったの?」ミカが訊いた。
「あたしも、以前からケンジさんにとっても憧れてて、お父ちゃんみたいだって感じてて、ずっと抱かれたいって思ってましたから、実際にケンジさんとこういうことになって、とっても満ち足りてます」
「いや、お父ちゃんみたいな人とセックスしたいなんて普通思わないだろ」ミカが言った。
「セックスするかどうかは別として、きっとお父ちゃんが生きていたら、あたし同じ気持ちになってたと思います。ケンジさんに抱かれて、温かさも大きさも安心感も、何度も夢でみたお父ちゃんと同じだ、ってずっと感じてましたもん」
「そうなんだね」ミカは感心したように言って、隣のケンジの顔を見た。
「で、ケンジさん、どうだったっすか? 夏輝の味は」修平がにこにこしながら言った。
「な、何だよ、『味』って」
「台本通り三回夏輝と一緒に天国に行ってたじゃない、ケンジ」ミカもにこにこしながら訊いた。
赤面して口をつぐんだケンジの代わりに夏輝が言った。「もう、とっても素敵な夜でした。真雪が言ってた通り。客観的に言っても、さわり方も、動き方も、話し方も声も表情も、全部、隙がない紳士って感じ。たぶん普通の男には絶対にできない芸当」
ミカが言った。「真雪が言ってた?」
「そう。ケンジさんとミカさん、龍くん夫婦とスワッピングしたんでしょ?」
ケンジは慌てて顔を上げた。「ま、真雪に聞いたの? あ、あの夜のこと」
「はい」夏輝は満面の笑みで応えた。「真雪、嬉々として熱く語ってました」
「そん時も続けて三回一緒に上り詰めたらしいじゃないっすか」修平も笑いながら言った。
「そ、そんなことまで聞いたのかっ」ケンジは早口で言った。
「だから今回の台本にも遠慮なく三回設定したんすよ。クライマックス」
「だけどね、」夏輝が頬を少し赤くして言った。「ケンジさんは台本通りあたしといっしょに三回イってくださった後、すぐにまた盛り上がって、いろんなポジションで抱いてくださったんだよ」
「え? あの後もまだやってたのか? 二人で」ミカが少し呆れたように言った。
「さ、さすがに夜通し何度もクライマックスを迎えるのは、この歳になるとつらいんだけどね……、あはは……」ケンジはばつが悪そうに頭を掻いた。
「それでもあの後、もう三回、一緒に登り詰めましたよね、ケンジさん」
「そ、そうだったね」ケンジは蚊の鳴くような小さな声で言った。
「さらに三回もか?」ミカが大声を出した。ケンジはびくん、と身体を震わせた。
「ってことは一晩に六回! 絶倫じゃん、ケンジ」
「シナリオには最初の三回しか設定してなかったのにな……」修平がにやにやしながら言った。
「ご、ごめん……調子に乗っちゃって……」ケンジはひどく申し訳なさそうに頭を掻いた。
「いいんすよ。夏輝も大満足したみたいだし」修平は笑いながらコーヒーをすすった。
◆