−玲奈、崩壊 その5−-1
_ 快感を表情に出さぬように、必死で平静を装ってはいたが、痴漢され感じている事を周囲に見透かされているのではないかと、玲奈は心の内では恐れていた。向かいのホームにも人はいたので、見られてはいないのか、気付かれはしないのか、そう思って玲奈は心配で仕方なかったが、それでも抵抗は出来なかった。
_ 向かいのホームの人達に怪しまれぬように、身じろぎ一つしないよう心掛け、ただ尻を触らせた。
_ 男の手が何度か円運動を繰り返すと、玲奈は触れられてもいない太ももから腰に掛けての広い範囲に、焼けるような熱い火照りを覚え、それも快感だった。とにかく気持ち良かった。気持ち良くて、気持ち良くて、どうしようもなかった。
_ 他人に見られているかもしれないスリル、公共の場で痴態を演じる背徳感、そんな精神的な緊張も、尻から湧き上がる肉体的な快感に拍車をかけていた。
_ 尻からの快感に浸っている内に玲奈は、理性が薄れて行くのをはっきりと自覚し実感した。つい先ほどまで心配していたことが、次第にどうでもいいように思えて来た。なぜ人に見られてはいけないのか、その理由が分からなくなって来た。知らない男にカラダを触られる事を恥じらう感覚が、分からなくなって来た。
_ 気持ちよくなる事がいけないなど、あるはずが無いように思えて来た。もう、どうなってもいいような気がしてきた。
_ 何を失おうが、どんな事態に陥ろうが、快感を味わえるのならそれでいいと考える様になって来た。
_ その時、列車が到着した。何両かが玲奈の前を横切り、速度を落とし、停車した。
_ その車両で向かいのホームからの視線が遮られ、列車のたてる音がホームを埋め尽くした瞬間、男の手は玲奈の秘部に触れた。
_ 誰の耳にも届きはしなかったが、すぐ背後にいる男達にも聞こえなかったが、玲奈は、
「んああっ」
と小さな喘ぎを漏らし、腰を前後にスウィングさせた。電車に乗り込む前に、玲奈は早くも陥落させられていたのだ。