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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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相手の幸福を本気で願うという事…-1

「青森へ行って下さい!、…お兄さんの居る。」

柊さんから突然切り出された話に、目の前で湯気が出るラーメンをただひたすら眉間に皺を寄せ一つも手を付けず熱い視線を注ぐ俺。

「あたるぅー、どぉーしたぁー?食べないのー。」
「……あっ、いや、まぁその。」
「伸びちゃうよぉー、僕食べちゃうよー。」

俺の家庭は他の家と比較し、裕福とはとても言い難い…、そんな時俺の兄が家に来ないか
って誘ってくれて、兄は経済力もあり婚約者も居る、故に彼らの所に移住すれば俺はもう
二度とあの貧相な家であの馬鹿親父に苦しめられる事もなくなる…、ダガ一つ問題が浮上
する…、それは他でもない俺の恋人…柊さんだ、厄介な事に兄の住所は青森であり、今俺らが住んでいる北海道ではない、つまり俺が兄の誘いに乗り裕福な暮らしをすれば柊さんと離ればなれとなる、そんなのは嫌だ、俺自身それに何より柊さんに寂しい思いをさせる
何て絶対にダメだ。だから俺は兄の誘いを断った、そして彼女と共に居る事を決意した。

最近あのバカ親父も派手な行動は控えて来た、皆の言う俺のゴミ屋敷も柊さんが念入りに大掃除してくれて、寂しい冷蔵庫も彼女とスーパーに行き裕福と化して、心配だった貧相で苦しい生活もこれで大丈夫、柊さんに孤独な思いだって…、それなのに…。

「君の居場所はこの北海道じゃ、ないから…。」

何故急に、俺がまた柊さんに何かした…とも思いないし、無論俺に飽きた、何て事も。
くよくよ考えても仕方ないので、取りあえず目の前のラーメンを口にする為、箸を取り
腹を満たそうとする、しかし。

「えぇーーーーーーーーーーーーっ!?」

瞬きをしても丼はキレイに空、真っ先に目の前の連を睨み付ける。

「ふぃー旨かったぁー♪、ん?だってあたる食べないんでしょ?」
「おーーーまーーーえぇーーーなぁーーーっ!!」

そうだ忘れてた、コイツは冗談を言わない奴だった…、不意にこの前4人で温泉に行った
時の事が脳裏に蘇る。

俺が髪を洗っているのに何時まで経ってもシャンプーが洗い流されず、振り向くと奴が
ニヤニヤしながらシャンプーを持って背後に立っていて。休憩コーナーで二人と合流し
その事を言ってはしゃいだら、巴はいつものように俺らを馬鹿扱いし優しい柊さんは
苦笑いしてくれて、ただその彼女が奇妙な目でこっちを見つめていた。

どうしてそれを1時間以上もやってるんだろう…とでも言わんばかりの面持ちで。そして
それに気づかないで怒ってる君もどうなんだろう…と言った顔で。

「もぅー、分かったよじゃー僕の分けてあげるから。」
「ったく当然だぜ……って空じゃねーかぁ、この野郎っ!」
「ははっ!」

もう、ワヤだ…。

「で?柊さんが青森に行ってほしいって?」

お冷を一飲みし、氷をカランと音を立て、一気に話を逸らす。

「あぁ、何でだろう…、向こうに行ったら離れ離れになるのに、俺の悲惨な暮らしだって
マシになったのに…。」
「……。」

ジーと俺を見つめながらお冷を再び口にする。

「無論柊さんも誰かさんみたいにおバカさんじゃないし考えもなくそんな事言った訳でも
悪意を抱いてそんな話を切り出した訳じゃないだろうね。」
「はぁ、人のラーメンは食う、人を馬鹿呼ばわりはする…、じゃー一体何で。」
「……まず暮らしがまともになったって言うけど、本当?」
「えっ何言ってんだよ、勿論だよ、彼女のお陰で部屋も人並で前の暗い部屋とは大違いで
食材だって前は偏ったコンビニ弁当ばっかりだったけど最近は柊さんのアドバイスから
きっちり一汁三菜で…。」
「……。」
「そりゃまぁー今でも家に帰るのは億劫だよ、帰宅しても誰も返事してくれないし、まぁ
人が居ないんだから当たり前だけど、親父は最近大人しくなったとはいえ親として何にもしてくれないのは変わらないし、その親父がまたいつ暴れて問題起こすかって思うと。」
「君確かこの前青森へ行ったんだっけ?柊さんと。」
「あぁ、軽い旅行だな、ありゃ。」
「どうだった?」
「楽しかったよ、兄貴は相変わらずで…懐かしいっつーか、暖かいつーか。」

蓮も一度兄貴に会った事がある、とても良い人だって…。

「OK質問変える。」
「えっ?」
「今の元、ゴミ屋敷で未だ親父さんが暴走する危険性が残ってる今の家と、そんな不安も
なく、愛しいお兄さんの居る青森、どっちが良い?」
「愛しいって、お止めなさいよ。」
「柊さん、後で言ってたよ「お兄さんといる彼、とっても楽しそうでした」って。」
「………。」
「幾ら鈍感な君でも、もう分かるよね?どうして柊さんがそんな事言ったのか…。」
「そこまで考えて…。」
「ほら。」

と言っていつの間にか注文してくれた餃子を俺に差し出す蓮、今度は空じゃない。誰かさんのせいでお腹ペコペコで早速頂く俺、そしてモグモグしてる俺に彼は口を動かす。

「まっ、どうするかは君次第だね。」
「……。」

眉を顰め、餃子に力なくタレをつけ、それに目を置く。

このまま北海道に残り、彼女と居るか。青森へ行き彼女の想い答えるか。

俺は……


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