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冥界の遁走曲
【ファンタジー その他小説】

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冥界の遁走曲〜第二章(前編)〜-4

「でもせっかくこうやってたまたま逢っちゃったんですから少しお話でもしませんか?」
「あ、ああ……そうだね」
闘夜はすっかり神楽のペースに巻き込まれていた。
気がつけば闘夜は神楽と共に屋上で座っていた。
「ちょっと、というかかなり聞きたい事があるんですけどいいですか?」
「ああ、いいよ」
闘夜は快く頷く。
「先輩って今好きな人とかいちゃったりするんですか?」
頷くんじゃなかったと闘夜は後悔した。
闘夜はそう言った話(いわゆる恋バナ)をしたことが無い。
正直に無いといってしまえば神楽をがっかりさせる上に会話が続かない。
だがいると言ってしまえばそこからまた追求されて自分が困ることになるだろう。
どうしたものか、と闘夜は考える。
「教えてくださいよー」
神楽はしきりに返事を催促する。
闘夜は焦りながらも会話を続けることを決めた。
特に理由はないつもりだった。
「いるよ」
「えー!本当ですかー!?」
神楽はとても嬉しそうにはしゃいでいる。
ここから神楽の更なる追求が始まるんだろうな、と闘夜は心の中で落ち込む。
が、
「それじゃーそれは心の中だけに留めておいてくださいね!」
「……え?」
何とも予想しない答えが返ってきた。
全く考えてもいない返事だったのでかえって困ってしまう。
「……聞かないの?」
もちろん、その好きな人が誰であるか、と言う事だ。
「はい、私は恋の話には独自の信条があるんです。
『相手の恋は相手の自主発言で聞いちゃおー!』です」
つまり神楽自身から相手の好きな人を聞きだしたりはしないという事だ。
しかし、
「でも俺に好きな人がいるかどうかは聞いたよね?」
「あ……」
しまった、と言ったような顔をした神楽を見て思わず闘夜は笑ってしまった。
「ぷっ……あっはっはっは……」
それを見て神楽も笑ってしまう。
「ふふふ……おかしいですね。
自分で言っている事とやってる事が違ってるって」
「矛盾してるね」
「矛盾……か」
何故か意味ありげに神楽は空を見る。
「霜月……?」
闘夜は神楽の顔を見る。
神楽は驚いたように闘夜の顔を見る。
「すみません、ちょっと感傷に浸っちゃっただけなので気にしないでください。
こう見えても私、けっこうセンチメンタルなんですから大事に扱ってくださいね?
あと私の事は神楽でいいですよ?
私も先輩の事を闘夜先輩って呼びたいですから」
矢継ぎ早に言っていく神楽にただ頷く事しかできない闘夜であった。
「あ、私そろそろ帰りますね」
「ああ、気をつけて」
「また一緒に話してくれますか?」
「ああ、いつでも」
闘夜はニッコリと笑う。
神楽との会話はそれほど苦しい会話でもなかった。
話題が恋バナ(?)だけであったがこの調子なら話をする分には困らないだろうと考えている。
「それじゃ、さようなら〜」
神楽は屋上のドアから去っていった。
「さて、今日は裕太を家に誘う用事もあるし帰るか」
闘夜は再び制カバンを持って、今度こそ帰宅した。


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