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Army×Army
【ボーイズ 恋愛小説】

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言っても無駄、暖簾にサバイバルナイフ。-1


気温は高く、空は快晴。だが、風が強くてプラマイゼロ。そんな春の日、オレに初めて彼氏ができた。
そう、男の恋人が出来たのだ。24年生きてきて男の恋人だ。まあ、自分でもなんだかな、と思う。
男同士とか今まで考えたことはないし、考えさせられる状況になったのも今回が初めてだからどうにもよく解らないが、まあ死ぬ訳じゃないし別にいいかってくらいだ。
勿論、始めに言ったし。
「お前のこと好きじゃねーけど、嫌いなタイプじゃないし」
って。
まあ、始めに言うオレも最低だと思うが。

そんなこんなで、初めての彼氏、佐久間 雨音と付き合っているんだが、こいつが物凄く生意気だ。
7つも年下で、高校生で、可愛い顔してるってのに、一言言えば十返してくるような口煩さ。そして容姿に反して物凄く口が悪い。常に喧嘩腰だ。
いつぞや、そんなに尖ってたら、社会は受け入れてくれねえぞ。と言ったら
「はあ?お前目ーわるいんじゃねー?社会は俺を受け入れたくて血眼だから」
とか、アホなことを言う限りだ。
自覚ある美少年は扱いが物凄く面倒くさい。

そう、見た目がなー。いいっつーか、良すぎるんだよな。
本人はイケメンだと豪語してるが、美少年って言葉がよく似合う。ちっちぇー顔に、すらりとした体躯、髪はサラサラで赤みがかった黒。目は大きいし、彫りが深いせいか西洋っぽさが更に本人を引き立てている。

の、くせにだ。
半端無い口の悪さ。もうあれは匙を投げるほどだ。
語尾に、ふざけんじゃねーよ、コラ。とか、うるせー。とか、最近はウザイ、アホか、このカスが、とか。
最早オレに胸をときめかせて告白した日が嘘みたいだ。

まあ、胸ときめかせたかわかんねぇけど。つか、あん時もふざけんじゃねーよって言われた気がする。

なんだかな。なんで口を開けば言い合いばっかなのに付き合ってるんだろ。
もう一月以上経っちまったから。

そう、あの晴れた春の日からもう一ヶ月以上過ぎた、ゴールデンウィークの半ば、なのだ。今日は。


「よう」
「おう」

職場の休みが重なったこの祝日、前々からデートだと騒がれてたから、休日にも関わらず朝からこうやって稼働するオレ。
ホントは寝てたい。いや、物凄く寝てたいと直前まで思ってたけど。遠目から見ても気合いが入ってる雨音を見て言わないことを決意。
言ったら朝から切れるに違いない。

「今日の格好、」
「ん?」

雨音がじっとオレを見て口を開く。
ここはオレと雨音が共に使う駅だ。休日で賑わう駅ナカは、体を近付けなければ聞き取れない。

「あんたの格好、すげーいい」
「……」

おい、いきなりボソッと言うなよ。思わず息が詰まったから。喋っても喋らなくても心臓に悪い奴だ。

「おい、聞いてんのか、コラ」

やっぱこういう奴だよな。うん。

「聞いてる聞いてる。誉めてもなにもでねえよ」
「うっせー、知ってるよカスが」

こうなる始末。解ってたけどな。
もういいや。多分雨音は自分の格好を誉めてほしいようだけど、面倒くさいからやめた。
雑誌から抜け出てきたような顔に、ブランドっぽい服。誉めて説明されても意味わかんねえし。濃い紫が肌に映えるね、とか言ったらキモがられるに違いない。


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