言っても無駄、暖簾にサバイバルナイフ。-3
「つか、タワレコってモールにあったっけ」
「アウトレットにはねーよ。つか、タワレコ行くの?歩けば行けるだろ。つーか、車で無音とかなんなんだよ、てめー」
いや、CD買うって言ったのお前だから。歩けば確かに近所にあるけど、車あるんだから遠くに連れてってやるって言う俺の優しさを無下にすんのか。
って、アウトレットモールに行くわけねえだろ。ショッピングモールだ。アホか。
「これ後付けの奴じゃん。ナビも入ってるし。テレビ見れるの?」
「映り悪いし、音声途切れるからテレビは見ねえよ」
「じゃ、年中ナビか」
「いや、道わかるからナビなんてつけねえ」
「あんたほんとに最低だな。画面に謝れ」
「うるせー」
何でもいいだろうが。中古車なんだからオプションまで気にしてねえっつの。
つか、どこ向かうんだ。とりあえずモールで構わねえか。タワレコ入ってなくても知らんがな。
「ハードディスクあんじゃん。何か入れてんの?は?空とか!機能何一つ使う気ねーのかよ!」
「そんなのあったなー」
「てめー、可哀想だろ!いつもガンガン何か聴いてるくせに、車に謝れ!」
「ん?」
「あ?なんだよ」
いつもガンガン何か聴いてるくせに?オレなんかやってたか?わからん。こいつは何を見て言ってるのかわからん。
「ヘッドフォン、毎朝聴いてるだろ。てめーのことも忘れてんのかよ、このボケが」
「あー」
「あー、じゃねーし。24にもなるとボケんの?早すぎじゃね?」
「うるせー」
確かに。確かにヘッドフォンはオレの一部と化してたから忘れてたわ。
うんうん。つまりはなんだ、こいつはオレに興味津々?
いや、今更だな。うん。
「何、もしかして毎朝何聴いてんのか気になってんの?」
「気になっちゃわりーのかよ」
「それでCDとか?もしかして同じの聴きたいとか?うわー」
「てめー、ふざけんじゃねーよ!わりーか!彼氏が聴いてんの気にならない奴なんかいねーよ!あー、そうだよ!同じの買いてーんだよ。わりーか!コラ」
あー、あー、あー。顔真っ赤にして。下唇噛んじゃって。ツンデレもここまで来ると病気だな。
そんなにオレが好きとか全面に出しちゃって。乙女だな。美少年だから許されそうな可愛さだな。