い-2
「青木さんこそ合コンしましょうよ〜」
絶対にこんな声色は女友達には使わないな。
そんな風に冷静に分析できるような声で、その子は直哉に甘えた。
「真実ちゃんと合コンしたいのは山々なんだけど。
俺の彼女、結構やきもち妬きなんだよ」
しれっと言ったその言葉を、派遣の子が聞き逃すはずがなくて。
「え!青木さん彼女がいたんですか?」
「うん。いるよ。凄いやきもち妬き」
はっ。いつ私がやきもちを妬きましたかね!
「へ〜!知りませんでした。伊藤さん知ってましたか?」
「知らない。青木のプライベートに興味ないから」
鼻で笑ってプレゼンの資料を紙媒体でチェックするためにプリントアウトする。
「伊藤さん、合コンは」
「あ〜。私も彼氏がいるからパス」
「え!伊藤さんも彼氏がいるんですか!」
「うん。甲斐性のない男だけどね」
「へ〜」
「おまけに遠距離。なかなか会えないの」
昨日、土曜日に仕事が入ったことを言われた時
「遠距離の恋人よりデートする回数が少ない!」と
文句を言った嫌味の続きだ。
「それは可哀そうですね」
そう。本当に私たちは仕事が忙し過ぎて遠距離レベルでデートが出来ない。
「もっといい男、さがしましょうよ」
本気で心配しているのか、眉を寄せて言う。
カワイ子ちゃんが大なしよ。
「へ〜。それでも別れないんだ?遠距離で甲斐性がないのに?」
嫌味っぽく直哉が言うから
「私がいないとだめなのよ。その男」
そうせせら笑ってやった。