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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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彼の居場所-1

麺を力強く湯切りする店員、スープの入った大きな釜から湧き出る湯気が店内の気温を
上昇させ暖かい。

「いやー、今日の取引相手は手強かったわ!」
「でもようやく契約が取れたな!」

お客はネクタイを緩めたワイシャツ姿のサラリーマンが目立つ。

「良かったね若葉!あたる、向こうに行かなくて。」

隣の席で餃子にタレをつけヒョイと箸で口に運び私を気に掛ける巴ちゃん。

彼との旅館の後、私は荷が下りた気分で吹っ切れたように、明日は快調に朝風呂に入り
二人で楽しく売店へ向かった。キーホルダーはもうあるので巴ちゃんと一条君にどんな
お土産にしたら喜んでくれるか二人で楽しく箱を持ち上げ考え、中にはおでんの元と言う
スープの素が売って居たりして、優しい佐伯君は早速買ってあげようとするも買えば
帰りのバス代がなくなってしまい、お爺ちゃんに電話したら「わしゃタクシーじゃない」
とブツッと切られ、佐伯君自身からも制止され、どうやら最初っから自分たちだけで
行うみたいで…。まぁ、お爺ちゃんはこの日も営業で、行先は申したけど遠い…、お年寄りにそんな所まで運転させるのはやはり可哀想。結局その旅館名物のお饅頭にした、その
方がお土産らしいし、翌日一条君の家で暖かいお茶を淹れ饅頭を頬張り土産話をした…
それはとても楽しいものだった、お土産はこうでなくては…、私は今後も旅行したら必ず
これを愉しみにやっていこうと思う、何だかハマってしまったのか。佐伯君がもっと早く
に私にいや私の気持ちを察してくれれば普通に旅行当日から彼と楽しめたのだが…。でも
彼は「また来ような」と私に言ってくれたので、勿体ない悔しさは消え失せた。

自宅の前に彼が来て、一緒に登校し、勉強を教えてもらったり彼の部活を応援しに観に
行ったり、帰りも私の方からドーナツ店へ誘ったり、彼と居る幸せな日々は続いた。

とは言え、案の定あのだらしのない彼の父親との生活は続き、帰宅すれば暗く空き缶や
つまみで散らかった部屋、食事もその場しのぎの栄養感のないカレーやソバ、いつも弁当やカップ麺、光熱費や家賃の請求も来て、いつもギリギリ…。

「そこはあまり気にすんな。」
「巴、ちゃん。」

その父親も多分反省何てしてないんだろうけど、今の所外で悪さはしてないようで、彼を
泣かせるような事はしていない、でも息子の苦しみも知らずどうやら行きつけのパチンコ
店で遊んでるかと思うと腸につかえる、またいつ問題を起こすか、どうしてそんな人の
気まぐれで…。

「殺しちゃいましょうか♪」
「うん!…って駄目だよ、そんなの。」
「だよなー、足がつくだろうから。」
「いやいやそんな価値ないよー。」

何か私たちの会話って…、息子向こうでラーメン美味しそうに啜ってるわ。

「アンタがあのゴミ屋敷を殺菌消毒して、食事も一緒に買い出ししたんでしょ?」
「もぅー巴ちゃんったら、まぁそうだけど。」

見るに見かね私は彼の部屋を掃除した、それはもう徹底的に隅から隅まで、基本おっとり
してる私にとってあれ程張りきったのは生まれて初めてだ、佐伯君は少しお節介そうに
思ってたけど、生まれ変わったような部屋を見て顔を赤く染め感激していた。

「若葉のお陰だね。」
「そんな、私は…。」

自分の行動で大好きな人が良い思いをする、そりゃーただ掃除をしただけどそれでも。
次にスーパーで買い物をした、人並の食材を買って掃除もだけどほとんど私が彼を引率
したようなもの、一遍だらしのない話に見えるけど、こういうのは割と本人より他人の方が生き生きとするもの。

「女同士話したい事があるから」と席を離れた私達、彼はどんぶりを両手に豪快にスープ
を飲み干す、家と外ではまるで顔つきが違う感じ。

私のお陰、かぁ。それら一式したお陰で部屋もキレイになり食事もある程度まともになり
家賃や光熱費は、どうにか自分でも信じられないくらい買い物を上手にやりくりし、その
費用をやりくり出来た。

その後彼は「ありがとう!」と力強く言ってくれた飛びっきりの笑顔で…、私もあの後
帰宅して、とっても清々しい気分だった、あれほど嬉しい気分はない。

「ねぇ、巴ちゃん。」
「んー?」
「好きな人に喜んで貰える行動が出来るって、とっても幸せな事だよね…。」

目を見開き、少し固まったのち…。

「そうだねっ!」

と、笑う。

「おっ、ガールズトーク終了か?」
「えぇ。」

彼の元へ向かう私達、ちなみに今日のお勘定は全て彼が支払う事に、彼の友人一条君が
強くそれを求めてきたので。

「分からやず屋のバカに罰金なっ!」…と。

彼もまた向こうへ行ってしまうのでは?と心配していたみたいで、その彼は一緒にいない
今は顔も見たくないのだろう…、まさに愛情の裏返しか。


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