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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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彼の居場所-2

これでお兄さんの居る青森へ行かずとも彼は人並にまともな生活を送れる…、そう安心
していたのだが、そんな想いを一瞬で滅ぼす光景が。

「何、これ…。」
「……。」

下校後、様子を見に彼の家へ向かった、するとその部屋は鼠色に染まり、見たくもない
空き缶につまみ…の代わりに弁当の食べ残しが散乱し。

「どういう、事でしょう?」
「………。」

一向に口を開こうとしない彼、その部屋は私が掃除をする前とほとんど、いやそれより
酷くなっている。

「実は、親父が…。」
「っ!」

ようやく重い口を開く彼。どうやら久しぶりに家に帰りそしてキレイになったこの部屋を
目の当たりにし、「お前っ!父さんに内緒で女連れ込んだのかっ!」だの「父ちゃんはな
あの部屋が好きなんだよ」とか変な事を言い出し、そいつのせいであっと言う間に元の
汚い地味な部屋に…。

「うっ、何でだよっ!」
「佐伯…君。」

片手で顔を隠し、何処か涙声。

「あれは…。」

更に私は見たくもないものが目に入ってしまい、それを手に取る。

「家賃の催促状?でしょうか。」

それは私がやりくりして何とか確保した筈じゃ。

「…親父が、アイツが使ったんだ。」
「!!」
「こうなると思って、分かりにくい所に隠した筈なのに!」

涙声に加え、怒りに満ちた声も。

彼が説明しなくても分かる、どーせパチンコに全てすったんだろう…。

何でしょう、火山の噴火前の如く怒りが静かに混みあがってきた。

で?アイツハ今日モ帰ラナイノカ?

暗く静まり返った家、もう一度掃除する余裕も気力も失せてきた。

「ううっ、俺の…俺のせいだ、ちゃんと隠して、それで。」
「佐伯…君。」

自分を責めだす彼。

「うおぉーいっ!♪とぉーちゃーんがけぇーて来たぞぅー♪」
「!!」

酔っ払って実に気持ち良さそうに帰ってきた男、顔を真っ赤にしヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラと、こちらへ寄ってくる。

「父…さん。」
「んーどぉーしたぁー我が息子よぉー♪」

アンタ二彼ヲ息子ト呼ブ資格ナンテナイ!

もはやそこに子供の不幸を嘆き、自分の行いを悔いる様子は全くなく…。

「おーーーーん?なぁーんだぁーアンタはぁー?」
「……………。」
「息子の友達か、いやーそれにしても結構可愛い。」


            バシッ!!

「!柊さん!?」
「……。」

気が付けば私の片手が上がっていた、二人とも驚いていたが実は自分も驚いていた。
時が止まったように固まる私達、佐伯君はひたすら目を丸くし口は開きっぱなし。

「なっ、何しやが。」
「それでも父親ですかぁっ!?」
「!!」
「小さい頃に母親を亡くし、お兄さんも今は傍に居ない、そんな中彼はいつもたった一人でずっとずぅーーとひもじく惨めに寂しい思いをしてぇ!」
「……。」
「彼がいつもどんな思いでこの家に帰るか分かりますっ!?毎日毎日やりたくもない家事をだるそうにやって…、何で彼がこんな家賃の催促状何か受け取らなきゃいけないんですかぁ!?」
「柊…さん。」
「親だったら、ちゃんと…ちゃんと子供を護りなさいよっ!それなのに、部屋を一瞬で
こんなにして、食料も…、必死にやりくりした家賃も…。」

手にはパチンコで手に入れたであろう煙草のケースにお酒の瓶の入った袋が。

自分でもこんなに頭に血が昇るとは夢にも思わなかった、私は奴のそんなお酒の瓶を
強引に取り上げ。

「あっ、何をするっ!」

何をする…じゃないっ!

私は高ぶりに高ぶった感情を抑えぬまま、その瓶を奴の顔面めがけ…。

「やめろっ!」
「ひっ!」

瓶は奴の顔に直撃する事なくギリギリで横の壁に衝突し、その酒は激しく音を立てて
破片と液体が床に零れ落ちる。

「はぁはぁはぁ…んぅ。」
「う、お、俺は…俺だって…。」

そういや一条君も似たような事したっけな、もはや私の顔は般若のように恐ろしい顔に。

「お願いです!親に代わり何て。」
「もういいっ!」
「あたる君。」

思わず下の名が、興奮する私を取り押さえるように腕をがしっと掴む。

「もういいよ、もう。」
「でも…。」
「ありがとう、若葉…。」

佐伯、君…。

「そうだよ、柊さん、そんなクズ…手を挙げる価値何てない。」
「れ、蓮っ!?」
「一条…君?」

どうやら彼も心配になったようで、私が暴挙に出た瞬間は見てないと思うが割れた破片や
怯えたこの人、そして取り乱す私を見て察したんでしょう。

「あたる!」
「はっはい!」

何で、君まで怯えるの…。

「鍋。」
「え。」
「母さんが鍋料理作って、あたる君も誘ったらって…。」

えっ!本当なの?それ…。

「いや、でもそんな行き成り。」
「確かに、唐突過ぎるね。」
「なら。」
「君の悪い癖だ、妙に優柔不断でウジウジと。」
「……。」
「でも、こんな所にいるよりもずっと良いでしょう。」
「一条、君。」
「僕は、君が苦しい思いをするのは絶対嫌だ、だから。」
「……佐伯君。」

彼を見つめ、答えを聞く。

「……分かった、行こう二人共。」



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