エツコとオッちゃん-11
11.
「やあ、山路先生、これ見てご覧なさい」
ドクターが、覗いていた顕微鏡から目を離した。
「ああ、これねえ、これ私の精子ですか?」
「元気でしょう。素晴らしい」
「はあ、ぴんぴんと良く動いてますねえ。数も多い」
「最近の若い男は、精子の数も少ないし元気も無い。少子化を嘆いても、中々解決は難しいですな。先生、これなら一発でお目出度ですよ、結婚されるんですか?」
「いやいや、そんな訳じゃないんですが、歳も歳だからまあ、念のために・・・」
「勿体無いですねえ」
エツコに生理が始まったと告げられた。
体重が40キロを越えて、肉付きが明らかにアノレキからの脱出を示していた。
「よかったなあ、エツコ、おめでとう」
「ウン、でも赤ちゃんが出来ちゃうよ」
「そうか、今までは妊娠のことは考えなくてよかったけど、これからは避妊をしないといけないか。オッちゃんも気になったから友達の医者に調べてもらったら、精子が元気に飛び回っていた。一発でお目出度だって言われたよ」
「エツコ、オッちゃんの子供を産みたい」
「一寸待てよ、オッちゃんが結婚をしないの知ってるよなあ」
「しなくったっていいもん」
「シングルマザーの生活は厳しいぞ」
「オッちゃん、養育費出してくれないかな?」
「それも良いけれど、未だその身体じゃいい子は産めないぞ。今の調子で、そうだな、あと一年、体力づくりしてからだなあ」
「オッちゃんに嫌われたくないから、頑張って吐くのをやめたんだ。エツコをずっと愛してくれるんなら、もっと頑張れるよ」
「分った、それじゃオッちゃんがOKするまでは、排卵期はピルを飲んでくれるか、とりあえず仮免だ」