健の家-1
1月下旬の週末。
ちづるは、自分の両親と
親戚の家に泊まりに行く事になった。
タクミもちょうど、
友達の健に誘われ、健の家に
泊まりで遊びに行く事になった。
土曜日。
タクミは、友達2人と健の家に
夕方に来た。
健の家は、T駅から徒歩20分の
場所にある築5年の一軒家だ。
高校で一緒になった健の家に、
タクミは何度か友達と遊びに来ていた。
健の両親は共働きで、夜、
家に居ない事が多いらしい。
タクミ達が遊びに来る時は、
2階にある健の部屋ではなく、
1階のリビングに居る事が多い。
今日も4人はリビングにいる。
テレビを見ながらお喋りをして、
出前でピザを注文する。
タクミは、ふと思う。
ちづちゃんも、
ここに来てたんだよなー
なんか 変な感じ
ちづちゃん達もこの部屋で
飲んでたのかな
タクミはぐるりと部屋を見渡す。
広く、綺麗なリビング。
システムキッチン。
リビングの一角に、
8人は座れそうな黒いソファー。
その真ん中には大きな木のテーブル。
タクミ達も、いつものように
黒いソファーに座っていた。
ピザを食べ終わり、
テレビゲームをした。
そのあと、誰からともなく
恋愛話が始まった。
夜11時。
前に、彼女の束縛が激しくて辛い、
と話していた友達が、
真剣に別れようかと悩んでいる。
3人は話を聞いたり
アドバイスしたりしていた。
そこへ、玄関の方からドアがバタンと
閉まる音がした。
4人はリビングのドアを見る。
ドアが開いた。
黒いスーツを着た健の姉、
知可子だった。
「ただいまー!あれー?友達?
いらっしゃーい!」
知可子はニコニコしながらそう言った。
顔が赤い。
明らかに酔っている。
タクミ達3人は、知可子に
「お邪魔してます。」と会釈をする。
健が言う。
「お帰り。土曜なのに飲んだの?」
「お水ー。ちょうだい。
お母さん、夜勤だっけ?」
知可子は、キッチンのすぐ横にある
4人掛けの椅子に座ると、
テーブルにつっぷした。
健は呆れ気味にキッチンに行って、
コップに水を注ぐ。
健が言う。
「うん。
姉ちゃん、明日も仕事なんでしょ?」
「仕事だからー!
飲まなきゃ、やってらんないの。」
タクミ達はしばらく
知可子達の様子を見ていたが、
またお喋りを再開する。
タクミは友達の話を聞きながら、
違う事を考える。
健の姉ちゃんに
ちづちゃんの事、
なんか聞けないかな
タクミがそんな事を考えていると、
健が知可子に話し始める。
「へー。
大変なんだねぇ。
分からんけど。
あ、姉ちゃん。
こないだ話したっしょ?
タクミ、常盤さん家の
お隣だったんだよ。」
「、へ? あー、、、ぁあ!
ちづるの家のお隣さん?
え? どの子?」
タクミはすかさず、知可子に言う。
「あ、俺です。」
知可子がタクミを見て言う。
「そっかー。凄い、偶然だねぇ。」
「常盤さん、
俺のバイト先のスーパーにも、
よく来るんですよー。」
タクミはニコニコしながら、話す。
何かちづるの事を聞けないかと
期待する。
知可子が言う。
「そーなんだー。
ちづるに最後に会ったの、、
いつだろー。」
知可子が独り言のように言うと、
健が言う。
「半年ぐらい前にも、来たよね。」
「え、そうだっけー?」
「なんで俺のが覚えてんだよ。」
「本当だよー。
ちづるカワイイからでしょー?
アンタ、きもーい。」
知可子はまだ酔っ払ってる様子で
笑っている。
タクミは立ち上がり、
2人に近づきながら話す。
「や、本当カワイイですよね、
常盤さん。
うちの店長も、言ってるー。」
すると、知可子が言う。
「確かに、カワイイ。うん。
ね、佐久間さんは?
見かける?」
「 え?」
佐久間さん ?
「あぁ、ごめん、ちづるの旦那。」
「あんまり見ないっすねー。」
「 ふーん、、
そーなんだー。」
「あ、でも1度だけ見ましたよ。
カッコイイ人だった。」
「だよね!? カッコイイよね!?
背は低いけど!」
知可子は急にテンションが上がり、
笑って話している。
そして、こう続ける。
「佐久間さん、モテるんだよ。」
「そーなんすかー。」
「あ、ねぇ、健、
焼酎飲みたいー 作って。」
健が答える。
「えー?明日、仕事でしょ?
大丈夫なの?」
「大丈夫ー!焼酎は残んないから。
あ、水割りがいい。」
「はいはい。」
健は、知可子の飲んでいた
水の入ったグラスを持つ。
冷蔵庫から氷を取り出して
グラスに入れると、
キッチンにある棚から焼酎を取り、
注ぐ。
知可子はタクミと健に話の続きをする。
「そんでー、、なんだっけ?
えっとー、、、そう!
佐久間さん、人気あるの。
狙ってる女の子、多かったよ。
職場に、
静香ってゆー女がいるんだけど。
その子も佐久間さんの事、大好きで。
超!嫌な女でさぁ!
ちづるにー、、
嫌がらせっぽい事をー、、
してきたんよー、、」
知可子はかなり酔っていて、
テンションは高いが
眠そうに話している。
タクミが言う。