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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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星司の帰国。そして…-3

「どう見た?」

少し前から中の様子を伺っていた月司が問い掛けた。

「悠子さんと別れる前の星司に戻ったようですね。落ち着いてますし、少しですが貫禄も出てきたようで」

陽司は星司が去った扉を見ながら素直に答えた。

「そうか」

「先代はどう感じましたか?」

陽司は座っていた椅子ごと月司に体を向けて聞き返した。

「わからん」

対象者の近くであれば、心が読めると思っていたが、星司の力の強さは予想以上だった。扉の向こうから伝わる雰囲気で、力の強さを支える心の強さを持つと感じることはできたのだが、それでも月司には不安を拭うことはできなかった。それが「わからん」という発言になっていた。歴然とした力の違いの中で、月司が気付いたことといえば、星司が帰着のことを知らせるために、わざと力を弛めて月司に読ませたということだけだった。

しばらく先代と現当主の2人は無言でそれぞれに思案し続けた。


星司は居間で待っていた母親の真理子に帰着の報告をした。

「おかえりなさい。少し見ない間に随分大人っぽくなったわね」

各務家を内側から支える当主の妻の真理子は、元々、この家に仕えていた家政婦だった。気さくでおおらかな人柄は、夫の陽司以上に月司が惚れ込み、是非、陽司の嫁になってくれと言わしめたほどだった。

月司の考えていたとおり、真理子は特殊な各務家の嫁として、申し分ない役割を担ってくれていた。常に気を張らなければならない特殊な環境下で、おおらかな真理子は各務家の癒しとなっていた。

そんな真理子を前にして、ホッと息をついた星司は、陽司との面会に自分が緊張していと改めて気付かされた。陽司の前で、肩の力を抜いたように見えていたが、その手に汗が滲んでいた。そんな星司の心の動揺をも包み込むように、真理子は優しく微笑んでいた。

「留守中、ご心配を掛けました」

「うふふ、何を他人行儀に言ってるのよ。その分、明日から親孝行して貰うからね」

優しげな母親の視線は辛かった。『親孝行』の言葉が胸に響いた。

「向こうはどうだった?友だち沢山できたの?」

真理子に答える言葉を選んでいたため、この真理子からの質問に星司は救われた気持ちになった。

「ええ、結構友人もできました。私なりに人脈も築けたと思います」

星司は素直に答えた。

「そう、留学してよかったわね」

留学前とは違う星司の様子に、真理子は心から喜んだ。

「はい…」

返事をしながら星司は少し顔を伏せた。

「もうそろそろ陽子も起きてくるけど、その前に星司が行って陽子を驚かせてあげて。うふふ、あの子、吃驚するわよ」

星司の思いに気付かない真理子は、いつも家族に見せるような屈託のない表情で言った。前日に、星司から陽子に帰宅の連絡を入れていたことは、真理子は知らなかった。

(母さん、ごめん)

星司は心の中で真理子に詫びると、陽子の部屋に向かった。



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