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早春 〜誘惑のストッキング〜
【熟女/人妻 官能小説】

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第3話 託された想い-1



「それじゃあ、また明日ね」

時計は、夕刻を過ぎる頃だった。
玄関先で、彼を見送る息子の声が、キッチンに居る私にも聞こえてきた。
この時、夕飯の準備をしようと家事に追われていたが、咄嗟に手を休めてひっそりと様子を伺った。

バタンッ!・・・・・・。

扉の閉まる音が聞こえると、私はタイミングを見計らう様に、少し間を置いて玄関先へと向かった。

「ねえ・・・陸人君は今帰ったの?」

彼を見送って部屋に戻る息子に、廊下ですれ違い様に話しかけた。

「そうだよ。たった今だけどね」

「少し遅かったみたいね」

「母さんどうしたの?」

「ええ・・・あなたも、陸人君のお家にお世話になったりするでしょう?。だから、日頃のお礼と思って、陸人君にお野菜を持たせてあげようとしてたんだけど・・・・・・」

私は、家庭菜園で育てた野菜が入った紙袋を、手にぶら下げていた。

「だったら、僕が自転車で届けてあげようか?」

「駄目よ・・・陸人君も自転車でしょう?。急いで届けないと間に合わないし・・・それに危険よ。ちょっと待って、お母さんが車で行って届けてくるから」

全ては、私の仕組んだシナリオ通りに進んでいた。
彼と再び向き合うためには、どうしても二人きりの時間が必用だった。

「だったら、僕も一緒に乗って行くよ」

「それも駄目よ。今、カレーを作ってる所だから、大地にお鍋の方見ててもらいたいのよ。すぐ帰ってくるから、ほんの少しの間だけお願い」

「おっ・・・今日はカレーなんだ。それじゃあ分かったよ。僕が見てるから、母さんが行ってきて」

息子の大地は、カレーが大好物だった。
それもあえて見越して、カレーに気を逸らせる為の、この日の献立だった。
全ては、完璧なまで事は進んでいた。

「それじゃあ、お留守番お願いね」

私はそう言いながら玄関を出た。

玄関を出ると、庭先のガレージには私の赤いコンパクトカーが止まっており、急いでそれに乗った。
エンジンを掛けると、すぐに車を発進させて、彼の帰り道でもある大通りに向かう一本道の方へとハンドルを切った。
特に寄り道などをしていなければ、彼とはほんの数分で遭遇するだろう。
それまでの間、私は再び激しい動悸に追われていた。
彼の性と向き合ってから、二人きりで会う戸惑いの心が拍車を掛けていたからだ。
私の中では整理は付けていても、彼の心内が見えてこない。
あの時、間違いなく彼にとっては行為であって、それを心の中に秘めるつもりなのだろうか?。
もし、彼に打ち明けられる様な事があったならば、私はどのように向き合っていけば良いのだろう。
数々の不安が過る中、私は車のハンドルを握りしめていた。

しばらくすると、自転車に乗った彼らしい後ろ姿を見付けた。
大通りに向かう交差点に差し掛かろうとした時に追いつくと、彼と認識した私は、軽くクラクションを鳴らした。

「陸人君・・・ちょっと待ってくれる?」

クラクションに気づいて自転車を止めた彼に、私は助手席の窓を開けて声を掛けた。
そして、後続車の邪魔にならないように路肩に車を停車させると、そのまま降りて彼に近づいて行った。
やはり彼は気にしているのだろう。
私を見るなり気まずそうな表情を見せると、すぐに顔を隠す様にうつむいた。

「急に呼び止めちゃって、ごめんなさいね」

私が話かけても、それに答える事無く、彼は相変わらず下を向いたままだった。
むしろ、その目線の先を追ってみたならば、私の履いている水色のパンプスに向いている様にも見えた。
そして、その下に履いているのは、彼が性的意識を表した同じベージュのストッキング。
つい数時間前まで、彼が行為に及んだものと、全く同じものだった。
彼にしてみれば、複雑な思いなのだろう。
その表情を伺えば、顔をこわばらせて歯を食いしばっていた。

「あの〜・・・おばさん僕は・・・・・・」

「さっきね、陸人君に渡すものがあったのよ。ちょっと待ってね」

彼は、満を持して打ち明ける様な姿勢を見せたが、私はその言葉を遮る様に話しかけた。
ここで、彼が行為であった事を認めれば、全てが狂う事になる。
私は、あくまでも事実無根を通す様に、事を運ばなければならなかった。
再び、彼と向き合う為にも・・・・・・。

私は車に戻ると、助手席のドアを開けて例の野菜の入った紙袋を取り出した。
そのまま彼の元に戻ると、その紙袋を手渡そうと差し出した。

「これね、おばさんが作った野菜なんだけど、お母さんに持って行ってくれるかな?。大地がいつもお世話になってるから、ほんの気持ちだから気にしないでって言ってほしいの」

「そんな・・・僕だって、いつも大ちゃんのお家に・・・・・・」

「良いのよ、どうせ私が作った野菜だし、美味しいかも分からないから、遠慮なく持って行ってよ」

律儀に遠慮する彼に対して、私は強引に腕を掴んで野菜の入った紙袋を持たせた。

「それと、もう一つ・・・陸人君にもお礼があるんだ。ちょっと、その紙袋を開いてくれる?」

彼は私に促されると、両手で素直に紙袋を開いた。

「おばさんこれは?」

紙袋に入った野菜の上には、茶色の包装紙に包まれた小箱が、目立つように入っていた。

「さっきね、陸人君がマッサージしてくれたお礼なの。おばさん、本当に気持ち良くてね。だから、これも気にしなくて良いの」

「でも、こんな高価なものを貰っちゃ、おばさんに悪いよ」


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