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OL、堕ちるまで
【OL/お姉さん 官能小説】

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前日、都内-1

東京港区、常盤製作所東京本社。

…カタカタ…

…ふぅ…これで…よし。校正は月曜日でいいや。二課の資料来ないし。

…小杉さん、二課から資料、来たよ。

…あ、寺田主任…ありがとうございます。でもこっちは月曜でも大丈夫ですか?

…いいよー。締切は木曜だから平気でしょ。じゃ、よろしくねー。

…りょーかいしましたっ。

打ち込んだデータを保存し、腕時計で時間を見る。大きく背伸びをするとそのまま背もたれに上半身を預けた。自分のデスクの真後ろ、少し離れたところに時計がかかっている。イナバウアーの形で天地の裏返ったその時計も見た。

午後5時35分。いつの間にか定時を20分過ぎていた。同僚の何人かは既に帰ったようだ。
むくみかけた足をパンプスに押し込み、パソコンの電源を落としている間にさっとデスクを片付ける。ペットボトルの僅かに残ったジャスミンティーを飲み干し、空ボトルを右の引き出しの下段から取り出したカバンに入れる。モニターがスタンバイになったのを確認して立ち上がり、同時に膝にかけていたブランケットを三度折り畳み、背もたれに掛けた。時計を見てからここまで45秒。一切無駄はない。

…さてと…帰りますか…お先に失礼しまーす…カード、ピッ♪

女子ロッカーで着替え、忘れ物がないかを確認し、エレベーターで下りて、裏口から後にする。駅へは正面より裏からのほうが近い。守衛にお辞儀をしながら自動改札のようにICカードをセンサーに当て、会社を後にする。カバンからイヤホンを取り出し、スマホにつなぎ、音楽を再生しようとして声をかけられた。

理恵ぇぇー!

再生キーのタップがあと0.3秒遅ければ自分を呼ぶ声はお気に入りのジャズソングのサックスソロにかき消されていただろう。人差し指がディスプレイの3mm手前で止まり、ほぼ同時に声が聞こえたほうを向いた。

…あ、黒部さん、お疲れ様です!

…あがり?

…はい、もうこのまま帰ります。

…駅まで一緒に帰ろう?

…電車まで一緒じゃないですか。

理恵は経理課の黒部茉莉子と新橋駅へ向かう。朝はよく同じ列車になることが多いが帰りは同じになることはほとんどない。


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