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新しい君に
【その他 官能小説】

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新しい君に-8

(8)

 新たな交流が始まって、俺は影のように離れない違和感を抱くようになった。   
 純子に『女』を感じるようになったとはいえ、『女体』はそこにはない。愛撫を交わし、純子の柔らかな口に放出しても、めくるめく快感のあとに、まだわずかな滴が残っているような感覚があった。生理的なものではない。想いの中に残滓のような空間を感じるのだった。その空間が『女体』であり、
(一体感……)なのだと思った。
挿入という終結の形がない。……
 愛おしく想ってものめり込み切れないのは、純子は男、特殊な『女』、障害者という観念が振り子のように心に揺れているからだろうか。
(それは、消し去ることはできない……)
俺は純子と同類ではない。

 しかし、純子に欲情する自分がいる。昂奮して、勃起して、身を震わせて射精する。俺にとって純子はなんだろう。妄想に被われた人形なのか……。
(ラブドール……)
仮想の『女』として性を感じているのだろうか。
(ちがう……純子……)
紛れもなくたしかな存在感がある。……

 明け方、ふと目覚めると純子が寝息を立てている。ほのかな香水の香りが漂ってくる。
2人とも裸だ。土曜日はいつもこうして眠る。
 股間を探る。
(勃っている……)
朝勃ち……。その硬さを確かめるように握った。
(夕べ、舐めた……クリ……)
純子は女の悦びを漲らせて射精した。
 握っているうちに呼応して俺も勃起してくる。

 自分は女なのだと自覚したのは、
「中学2年の時……」
先週、純子は自ら語った。
 小学生の頃から男子が好きだったが、性的な関心と友達としての感情と曖昧なものだった。ただ、男子が誰でも注目する可愛い女の子にはまったく興味はなかった。
「2年になって間もなく、1年先輩の女子から交際を申し込まれたんです。可愛いって言われたんです」
 その時の言葉は、
「こんどどこか遊びにいかない?」
それは友達になろうという意味に受け取った。先輩でもあったし、小学校にはない上下関係が新鮮に思えた。
「女の子同士の付き合い……」
自分ではそう捉えていたから、彼女の部屋に誘われた時にも特別な意識はもたなかった。
「今日、家、誰もいないの……」

「男子だったら期待と予感でバクバクものだったかも……」
彼女のほうはきっとそうだったのだ。

「あたし、話をしているうちに興味が湧いてきちゃって……」
興味というのは、
(こういう風になりたい……)
先輩の白い膝や膨らんだ胸、体形を見ているうちに高まってきた『女』への憧れ、願望といった想いだった。

「先輩、肌がきれいですね」
心からそう思って思わず膝に手を触れた。彼女にとっては男子の行動と思っただろう。
「先輩の顔を見たら赤くなってて……」
すぐに謝った。
「すいません」
「いいのよ、三上くん。……好きにして、いいのよ」
先輩は脚を伸ばすとスカートを引き上げて太ももを見せた。その白さ、美しさといったらなかった。
「きれい……」
太ももに触ってさすった行為はもはや彼女への愛撫となっていた。
「三上くん……」

「先輩、どんなパンツ穿いてるんですか?」
「いや、そんなこと……」
言いながら片膝を立てていた。
「見せてください」
スカートをめくるとピンクのパンツが覗いた。小さな三角の股。
「ああ、三上くん」
先輩は仰向けにゆっくり倒れて両膝を立てて開いた。

「あたし、気がついたら先輩のパンツを脱がしていたんです」
「恥ずかしい……見るだけよ、見るだけよ」
初めて目にした女性器。
(欲しい……あたしも、欲しい)
『女』になりたい。いや、自分は『女』だという強い確信だった。

「オッパイも見ました」
「エッチしちゃいやよ……」
顔だけでなく体もうっすら紅く色づいていた。乳房を揉んだのはその体に同化したい想いからだった。
「ああ、だめ……エッチはだめ」

「するわけないですよ。女子に興味ないんですから」
昂奮していたとすれば自分が描く女体をつぶさに観察して触れた感動だった。

「それで、その先輩とはどうなったの?」
俺が訊くと、純子は悲しい目を見せた。
「何度か会って、裸を見たあと、あたしは心は女なんだって言いました……。先輩は驚きのあまり絶句して……」
言葉もなく、気まずい想いで別れたという。
「数日後には、あたし、変態扱いになってました。おかま、おねえ、ニューハーフ……一緒くたで、何でもよかったんでしょう……」
そんな中、近づいてきたのが最初の『彼氏』だった。
「興味だけでした……。体、見られて、屈辱でした……」
純子は俺の胸に顔を押し当ててきた。


 


 

 

 


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