嵐の始まり-4
「準備はいいか?」
THRUSHの地下駐車場に止まる2台の車。
黒のベンツAMGとやはり黒のハマーH2。
時間は、ようやく日が沈みはじめたあたり。
「長距離ドライブだ。途中で寝るんじゃねえぞ。それと調子に乗ってサツにパクられんなよ。」
仕切っていたのはトリヤマ。
ベンツAMGの運転手。
後部座席には、静かにタバコを燻らせる和磨の姿。
ハマーH2にミノ、タン、ハツの3人が乗り込んでいく。
「へへ……オジキ、いよいよ感動のご対面ですね。」
運転席に乗り込み、トリヤマが嬉々とした声を上げる。
「感動ねぇ……。」
和磨は、独り言のようにつぶやくと、遠くを見るような目を窓の外に向けた。
タバコを揉み消すと、黒のスーツの内ポケットから、白い封書を取り出した。
府中に落ちていたときに、送られてきた一通の手紙。
宛名は、「如月和磨」様。
差出人は……。
愛でるように、封筒の差出人の名を指でなぞった。
帰りてえよなァ、ツグミ。
お前は、ここでしか生きられねえんだ。
俺と離れては、暮らせねえんだ。
待ってろ……今、迎えに行ってやる。
帰るべき家に、帰してやるよ……。
和磨の口元が残忍に歪んでいく。
キーが回され、重厚なエンジン音が駐車場内に響き渡る。
「行くぞ!」
そのトリヤマの叫び声を合図に、不気味な黒い車列が、ゆっくりと動き出した。