つちやたち6-1
「いや、いや、行きたくない、そんなのムリ」
「土屋くん、いい加減にしてくれよ」
鳥飼さんが割って入ってくると、土屋はその首に手を回し
「鳥飼さーここまで来ていじめられっこに戻りたくねーだろ? 少し貸してくれれば終わるんだからさ」
「でも若月に説明が付かない」
「それは俺たちで考えるからよ、な? 良いだろ、お前は催眠をかければ普通の学園生活になるんだからよ」
うそでしょ、話しを進めないでよ
「理由を考えてくれるなら……」鳥飼さんは認めてしまった。
足が震える、誰も守ってくれない
「来週以降は月一しか頼みに来ないし、飽きたら一生関わらないから安心してくれよ」
「うん、分かった」
なんなの!うそでしょ
「やだぁぁだずげでおぉぉ」老婆のような声が出た。
その声に苛立ったのか「うるせー着替えろ」と土屋のケリが太ももに当たる。
「いだぁい」
太ももをさすりながら、下着を拾うと、土屋に取られた。
「下着は着けなくていいから、制服だけ羽織れよ」耳元で怒鳴られた。
ダメだ、怖い、制服を拾い上げて着替える、
「早くしろよ」と太ももに蹴りが飛ぶ、
急いでいるのに
着替え終わり、しゃがんでいる土屋を見ると、
嬉しそうに「安心しろもう出ねーから、家に着いたらよ女体の神秘ってのを研究させてくれればいいからよ」
とスカートをめくった。
私が言えるのはこれだけだ「痛くしないで下さい」
立ち上がり土屋は私の背中をさすって
「大丈夫だよ、痛いのは少しだけだから」と押した。
誰か助けて
押されるまま進む、その横で太眉が「明日の昼に取りに来ていいか」と聞く
「いいよ、待ってるからな」「じゃーその次は俺だから、おもちゃ買っとくかぁ」
ああ、もう助からない
教室のドアに近づくと土屋が驚いた声を出す
「山本、いつからそこにいたんだよ」
土屋の声の方向を見ると顔が認識出来ない男が立っていた。
「よぉ、最初からいたよ、面白い物撮れたし」
そいつの手にはビデオムービーが持たれていた。
「なんだ山本、それで脅すのかよ、いい度胸じゃねーか」と詰め寄る。
「いや、これは俺の趣味だ、誰にも見せるつもりはない」
「そうかよ、それじゃぁ若月で遊びたいのか?」
「はは、流石にそれは飽きたんでな、そうだろ わ・か・つ・き」
顔が見えた。そうだった。
山本くんの、いや、山本様のお声を聞いて思い出した。
私の絶対的支配者はこの御方だった。
ずっと引っかかっていた、鳥飼は違うとゆう違和感はこれだったんだ。
山本様の命令で、新しい支配者が鳥飼に任命されただけ、
その間は山本様が認識できない状態だったんだ。
どうして今まで忘れていたんだろう。
「山本さま、思い出しました」彼は微笑んだ。
状況が分からない土屋達は
「山本、興味がないならどいてくれよ」と触ろうとすると、
「土屋、お前何様なんだ」と睨む。
そのとたん土屋達はその場に尻もちをついて倒れた。
「ああ!」何かを思い出した彼らは3人共土下座をして謝りだした。
「申し訳ございません」
山本様は彼ら見下ろして
「土屋、お前そっちの性格の方が合ってんじゃねーか」と意味不明な事を言ってから鳥飼を見る、
「鳥飼、人に教えない約束を破ったよな、催眠権は剥奪するからな」
「そんなぁ〜 なんでバレたんだ」
「決まってんだろ、土屋達が教えてくれたよ」
「え!俺達が? いつ教えたんだろう??」
「気にするな、そうゆうもんだ」
「気にしてはいけない……分かった」土屋はブツブツと同じ言葉を繰り返している。
「さて鳥飼、大金の割にはレンタル日数が少ないので、せめて土屋達のいじめからは開放してやるよ」
「え!本当ですか」
「ああ、それでいいよな土屋?十分仕返し出来ただろ?」
仕返しって何?
「はい、思い出しました。僕は鳥飼くんに虐められていたんですね」
「そうだよ、俺たち4人同じ中学だったし、金髪ヤンキーの鳥飼に土屋は虐められていたからな」
4人って、あ!私もだった。
そういえば金髪いたなぁ鳥飼だったんだ。
「そうでした、土屋くんをパシリさせていたんだ」
「お互いいじめられる気持ちが分かっただろうから、もうしないよな」
「確かに」「もうしないよ」
「言っておくが、お互いの性格を変えただけで、虐める命令はしてないからな」
「分かってます」二人共応える。
「記憶は消さないでおいてやるよ、どうせ誰にも言えないけどな」
「写真は?」
「消す必要ないよ、それに中学では皆の憧れの若月とやれたんだ、忘れたくないだろ?」
「はい、ありがとうございます」男どもは嬉しそう。
私としては写真消してほしいけど山本様が言うなら、それでいい
「よし、次は若月だな、よく頑張ったなエライぞ」
頭をなでてくれた。最高の幸せぇ〜このまま召されてもいい。
「山本様のためなら何でもします」
「ありがとうな、お前達のおかげでお金がたまるよ、少しの間休んでいいからな」
お前たち? そうだよね私だけじゃないよね、他の娘に負けないようにしなきゃ。
「私頑張ります」
微笑む山本様は私達を並ばせると
「みんなリセットするよ」
山本様の口が動く、良いリズムで話す言葉は自分に取り込むと同時に消えて行く
どうしても何を言っているか覚えられない。
もっと集中すれば聞こえるかも
「……土屋はカツアゲした金でなに買うんだ?」「ゆきねぇ……」
土屋の声だけが聞こえた、ような気がする……