回天-10
ミナの寝息を確かめて、タケルはゆっくりと腕を抜いた。
ベッドから下りると、制服のポケットからスマホを取りだした。
着信の表示はなかった。
すぐに母の番号を検索した。
いくらなんでも帰りが遅すぎる。
何か事件に巻き込まれたのかもしれない。
胸に不安があった。
母の番号にダイヤルした。
機械に疎い母は、留守電機能も設定しておらず、ダイヤル音はずっと鳴り続けた。
タケルは、スマホを耳に当てたまま、不安な気持ちで母が応答するのをひたすら待ち続けた。
――早く電話に出ろ……。
胸中で、つぶやいた。